乳白色が美しく、栄養素が豊富なカキは「海のミルク」とも呼ばれる。(photo/写真映像部・高野楓菜)
乳白色が美しく、栄養素が豊富なカキは「海のミルク」とも呼ばれる。(photo/写真映像部・高野楓菜)

 カキの「生食用」表示の見直しが検討されている。つるっとした喉ごしと濃厚な旨味。

【写真】365日おいしく味わうことができるカキ

 私たちが愛するカキの生食はどう変わるのか。AERA 2022年6月13日号の記事を紹介する。

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 濃厚な旨味が口いっぱいに広がるぷりっぷりの生ガキ。そのカキの「生食用」表示を見直す動きがある。

「大臣、カキにあたったりしたことはありますか」

「私も生ガキが大好きなもんですから、おなかを壊しても懲りずに食べています」

 4月19日の衆議院消費者問題特別委員会でのやり取りだ。質問の主は、日本維新の会に所属する浅川義治議員。応じたのは、若宮健嗣消費者・食品安全担当相だ。カキの「生食表示」についての答弁は、約7分にわたった。

■仏では国が海域を検査

 カキなどの二枚貝は、海水から大腸菌やノロウイルスなどが取り込まれ、体内で濃縮することがある。そうしたカキを食べると、下痢や発熱、嘔吐など食中毒の症状が出ることも。生食用として出荷する際には、きれいな海域で育てることや、収穫後には殺菌した海水で浄化するといった基準が食品衛生法で定められている。

 だが、指導は各都道府県などに任せられている。ほかにも課題があるという。

「カキの養殖が盛んなフランスなどでは、国が海域を抜き打ちで検査しています。一方、日本は水産業者らが自主的に検査しているのが特徴です」

 そう説明するのは、オンライン百科事典「カキペディア」編集長の佐藤言也(ともや)さん(46)だ。今後、国が生食表示のあり方を見直すことは、カキにとってもいいことだと指摘する。

「ただ規制するのではなく、国が安全を担保することになればより安心して食べることができるし、海外への輸出も広がります。生産者のなかでも、基準に合うきれいな海域を維持しようという意識が強まり、環境も守られます」

 と期待も寄せる。

 ただし、いくら表示基準が改められたとしても、カキの生食にゼロリスクはあり得ない。

 大阪府に住む会社員男性(29)は無類のカキ好きだ。

「塩味が利いていて、つるっとした喉ごしが最高。レモンをしぼるのも、ポン酢をかけるのもいい。焼き、蒸し、フライのどれもいいけど、やっぱり生はたまらない」

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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