作家・画家の大宮エリーさんの新連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんだろうと考えます。2人目のゲスト、シンガー・ソングライターの小沢健二さんとの対談を振り返ります。

*  *  *

 小沢さんに出会ったのは、数年前、スチャダラパーのBoseさんから誘われたカラオケ。少し大きめな部屋にフレンチフライやからあげがあって、なんといってもオザケンが来日したから、「おかえりパーティー」ということだった(と思っていた)。

「自分の曲じゃなく、ここにいる誰かの曲を歌って」

 本人がいる中、他人が歌うもんだから当然盛り上がる。その2次会でBoseさんに、「小沢くん、エリーは後輩だから」と紹介された。

 以来、小沢さんといえば先輩、先輩といえば小沢さんという思い込みができた。そしてこのたびの対談。冒頭、そんな昔話を振ったらば、

「あれ、僕の発案だったんです」

 え? Boseさんあたりでは?

「アメリカに住んでるころだったので、日本で一番かっこいいのはカラオケだろうって」

 もうのっけからオザケンだった。軽やかに、風のようにかっこいい。

 歌も素晴らしいのだけれど、話も彼の思考があるから惹(ひ)き込まれる。

 意外だったのは、在学中、すでにミュージシャンとしてブレイクしていたのに、かなり勉強し、論文も読まれていたこと。

「大学1年で入った状態で、東大の教養学部ってさ、“はい、高校まで習ってたこと全部うそですから”って言われるじゃないですか」

 と言われ、嫉妬した。

 私は高校時代、すごく生物が好きで、将来、研究者になると思われていたくらい、ひたむきだった。

 質問するたび、先生が困惑し、「確かに君の言うのが真実で、大学ではそう教えるんだけど……今は忘れて」だったのが、大学に入ると悲しいかなその熱意は消滅していった。

 だから、小沢さんがまぶしかった。高校までの熱量と同じ、いやもっと雄大な熱量で学問に向き合っていたんだから。

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