長年、軍事的中立を取ってきたフィンランドは5月18日、NATOへの加盟を正式に申請した。その歴史的決断を担ったのは、若きリーダーであるサンナ・マリン首相。なぜ政治家を志したか、そして自らの使命とは──。AERAは単独インタビューでその人物像に迫った。AERA 2022年5月30日号の記事から。(全3回の2回目)

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──1985年、ヘルシンキに生まれた。両親の離婚後、女性パートナーと暮らすようになった母親のもとで育った。

マリン首相:レインボー・ファミリーで育ったことは、私の世界の見方に影響を与えています。平等や人権は私にとって重要ですし、ジェンダーやマイノリティーは私の心の近くにあります。みんなが平等で同じ可能性を持てる世界を作りたいと願っています。

──家庭は裕福ではなかったが、子ども時代は政治家になりたいとは考えたこともなかったという。

マリン首相:政治に関心を持つようになったのは、大学に入り、20歳になって始めた政治活動からです。私は世界に対して何かできるかもしれないと考えたのです。人権をめぐる状況や社会におけるマイノリティーの扱い方など、気になることがたくさんありました。環境や気候変動の問題も、私にはとても大切でした。でも、政治はそうしたことに十分目を向けていないと思えました。

 そして、そういった問題を解決するのは他の誰の仕事でもない、私の仕事で責任だと思えたのです。だから、政治の世界に入ったのです。いつか首相になるとは思いませんでした。私はただ、世界を変えたかったし、自分が大事に思う問題に取り組みたかった。私はまだ若いので、ここまでかなり早くたどり着いたと思われるかもしれませんが、私はもう15年、政治に関わっています。

 私には私の前に道を敷いてくれた多くの先輩たちがいました。私の世代の活躍を可能にした、多くの女性政治家たちを大いに尊敬しています。

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