2020年11月14日、東京・元赤坂の秋篠宮御仮寓所での秋篠宮ご一家(写真:宮内庁提供)
2020年11月14日、東京・元赤坂の秋篠宮御仮寓所での秋篠宮ご一家(写真:宮内庁提供)

 江森敬治さんが秋篠宮さまに37回も面会して書いた著書『秋篠宮』が話題だ。そこから見えてくるのは「皇族」と「一人の人間」のはざまで苦悩する姿だ。AERA 2022年5月30日号の記事から。

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 苦境において手を差し伸べてくれる。そんな友を持つ人は幸せだ。だから秋篠宮さまは、幸せな人──話題の本『秋篠宮』を読んで思ったことだ。

 著者の江森敬治さんは今年3月まで毎日新聞記者をしていた。が、秋篠宮さまとの出会いのきっかけは取材でなく、妻だった。

 結婚前に学習院大学経済学部の副手をしていた妻が、川嶋辰彦教授を通し、高校生だった長女・紀子さんと親しくなった。1990年、紀子さんは秋篠宮さまと結婚。江森さんと秋篠宮さまは翌年2月に初めて会ったが、お互いに妻同伴だった。

■メディアと皇室の問題

 江森さんはその年、宮内庁担当に。3年で担当を離れる時、秋篠宮さまは「これでお会いしやすくなりましたね」と笑った──という話は、江森さんの前著『秋篠宮さま』に書いてある。

 出版したのは98年だが、大きく後押ししたのは96年の出来事だったということは想像に難くない。同年4月、秋篠宮さまはタイを私的に訪問。生物学の研究だったが、来日中の米大統領の晩餐会と重なっていたため、大きな批判を招いたのだ。

 江森さんは経緯を解きほぐす。同時に、メディアが伝えるのとは違う秋篠宮さまの「素顔」を描写する。そこから浮かぶメディアと皇室、双方の問題点を指摘する。『秋篠宮』で江森さんがしようとしたことの原点だ。

 2冊を通してわかるのは、江森さんが秋篠宮さまの良き友であるということで、冒頭にも書いた。そして、良き友を持つのは良き人。そのことも思った。

 前置きは以上。本題の『秋篠宮』だ。「はじめに」にこうある。

<私は、本書のための取材を開始した一七年六月から脱稿する二二年一月末までの間に、秋篠宮邸および御仮寓所に合計三十七回、足を運んだ>

 17年5月、NHK秋篠宮家の長女眞子さんと小室圭さんの婚約内定をスクープ。以来、つい最近までの37回だから、話題になって当然だ。17年12月に「小室さんの母の借金問題」が報じられ、18年2月、結婚に関する儀式の延期が発表された。延期を提案したのは眞子さんで、1月初旬には決まっていたことをこの本で知った。延期発表直後に秋篠宮さまが江森さんに言った「二人はそれでも結婚しますよ」と「先のことは、誰にも分かりませんからね」は、多くのメディアが引用している。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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