世界各国が「マスク着用義務撤廃」を表明する中、日本では外でのマスク着用に意見が分かれる。外では不要とする見解の専門家に押さえておきたいポイントを聞いた。AERA2022年5月30日号の記事を紹介する。

※写真はイメージ(gettyimages)
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 マスクが当たり前になりもうすぐ3回目の夏。専門家にマスクとの付き合い方のポイントを聞いた。

「日本医師会の中川俊男会長は『マスクを完全に外せるのはコロナが終息したとき』と発言しています。私自身も、欧米のような『マスクなし』は推奨できない。ただし、屋外で人混みでないところや、運動時はマスクを外して良いと考えています」(国際医療福祉大学熱海病院臨床検査科の〆谷直人検査部長)

 マスク着用の目的の一つは、自身が感染していた場合、「人にうつさないため」。そのため人が集まるところではマスク着用、屋内でも、運動をするスポーツジムは熱中症対策としてマスクを外すことを勧める。

「うちの病院の中で一番マスクをつけていない職員かもしれません」と話すのは、国立病院機構仙台医療センターウイルスセンター長の西村秀一さん。業務的に患者と接することがなく、部屋にひとりでいるときやだれもいない廊下を歩くときなど、外している。「人にうつさない」にせよ防御にせよ周囲に人がいなければ、マスクは不要。

「熱中症が心配な夏に限らず、外でマスクは必要ありません」(西村さん)

 屋外の広い場所では、すれちがった相手が咳(せき)をしても、ウイルスに感染する可能性は極めて低い。一回の咳で出るウイルスの量は少ないうえ、時間の経過で拡散し、風で運ばれてどこかへ行ってしまう。すれ違うほんの短い時間で、ウイルスを吸い込む確率は極端に低くなるという。

■100%防御は不可能

 ただし、換気の悪い屋内や、屋外でも周囲を壁に囲まれた狭い場所で大勢が「密集する状態」では違う。なかなか拡散しないので、エアロゾル中にウイルスが存在すれば感染のリスクは高まる。そこでは屋外の風上にいるか、風下にいるかでも感染リスクは変わってくる。

 さらに西村さんはマスクによる「防御」の注意点を強調する。マスクをつけても素材が悪ければウイルスが通過する。

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