暗号資産を投資対象とする機関投資家も増えて、株価と連動することも多くなってきた。始めるなら短期より長期の投資を心がけよう(写真:gettyimages)
暗号資産を投資対象とする機関投資家も増えて、株価と連動することも多くなってきた。始めるなら短期より長期の投資を心がけよう(写真:gettyimages)

 ビットコインにイーサリアム。どこかで聞いたことはあるけど、実のところはよくわからない。長期投資の選択肢として暗号資産を選ぶ人が増えています。始める前に、最低限のことは理解しよう。AERA 2022年5月23日号の「資産防衛」特集から紹介。

【図】ビットコインの値動きはこちら

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 底に金貨を隠した菓子箱に「おぬしも悪よのう」とニヤリとするお代官さま。身代金の札束が詰まったジュラルミンのケースを、犯人に向けて滑らせるおとり捜査官……。

 これまでは見たり触ったりできる「形」があったからこそ、お金は人々を惑わせてきた。そんなお金がネット空間だけでやりとりできる、形のないデータに姿を変えようとしている。暗号資産(仮想通貨)だ。

 FX(外国為替証拠金取引)のように、暗号資産への投資も注目されている。当初はデジタルに詳しい人が、新しい時代を味わいたくてメモリアル的に購入するような特殊なものだったが、ここ数年は機関投資家も参入。莫大(ばくだい)な資金が流入し、個人投資家も呼び込んでいる。

 その代名詞ともいえるビットコインは、登場した2000年代の終わりごろには1BTC(ビットコイン)が1円以下だったのが、今では400万円超(5月15日時点)に膨らんだ。

「暗号資産は激しい値動きなどから、短期間で利益を出す投資先と考えている人もいますが、特にビットコインは長期間持っていても、価値が下がるリスクが少ない投資先として注目されています。つまり金に近い、資産防衛(価値の保存)に向いている投資先なんです」

 そう話すのは暗号資産の交換業者(取引所)大手ビットバンクの広報担当者。長期投資のリスクが少ないという理由は、ビットコインの仕組みにあるとか……と詳しく解説してもらう前に、暗号資産のおさらいから始めよう。

ピザ2枚400億円也

 ビットコインの名前が世に出てきたのは2008年ごろ。サトシ・ナカモトという日本人ふうの名前を持った謎の人物が、「ブロックチェーン技術を使った中央管理者のいない決済システム」なる英語の論文を発表してからだった。まもなくこの論文に書かれたような「国境のない通貨」に共感した開発者たちが、まったく新しい通貨を運用するためのソフトウェアなどをつくった。10年には世界初の暗号資産として、ビットコインの最初の取引が行われた。

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