アデノウイルスは7種類80以上の型があり、型により感染しやすい部位や症状も異なる(写真:gettyimages)
アデノウイルスは7種類80以上の型があり、型により感染しやすい部位や症状も異なる(写真:gettyimages)

 子どもの急性肝炎が世界各地から報告されているが、現時点でもっとも有力視されている原因が、風邪の症状や胃腸炎などを起こすアデノウイルスだ。一部の国からは、アデノウイルスがここ数年に比べて流行しているという報告もある。AERA 2022年5月23日号の記事を紹介する。

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 これまで、基礎疾患があり免疫状態の低下した子どもがアデノウイルスに感染して肝炎が起きたことはあったが、健康な子どもが感染して肝炎が起きたという報告はあまりなかった。

 しかし、米疾病対策センター(CDC)によると、2021年10月~22年2月にアラバマ州の子ども病院で原因不明の急性肝炎になった9人のうち、血液検体でアデノウイルスへの感染を詳しく調べた5人は、全員が「アデノウイルス41型」に感染していた。英国でも、血液検体で詳しくアデノウイルスを調べた子ども18人全員がアデノウイルス41型への感染だった。

 41型は「腸管アデノウイルス」と呼ばれ、消化器に感染しやすい。

「41型は通常、胃腸炎を起こし、嘔吐(おうと)や下痢(げり)といった症状が起こります。消化器から胆道を通り、肝臓にも感染する可能性はあります。ただし、今回、報告されている急性肝炎の中には41型への感染を伴わないものもありますので、これが原因かどうかはまだわかりません」

 子どもの感染症に詳しい川崎医科大学の中野貴司教授(小児科)はこう説明する。

 英国では、急性肝炎を発症した子どもの検体を調べるほか、専門家による保護者へのインタビューなども行い、原因の解明を進めている。報告書によると、5月3日時点で、原因と疑われるような毒物は浮上していない。また、共通した食品や飲料水、特定の場所への旅行の経験、家族構成などは見つかっていない。

 因果関係は不明だが、データのある92人のうち64人(69.6%)は、犬を飼っていたり、犬に接したりしていた。ただし、英国健康安全保障庁は、ペット犬の存在と急性肝炎の関係は現時点では不明だとしている。

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