服などを着たまま浮かぶ練習をする児童。「背浮き」は長時間浮き続けることができ、救助される可能性が高くなる
服などを着たまま浮かぶ練習をする児童。「背浮き」は長時間浮き続けることができ、救助される可能性が高くなる

 新型コロナウイルスに対応した緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の行動制限がなくなり、川や山など観光地に人出が戻りつつある。一方、レジャーによる事故も相次いでいる。AERA 2022年5月23日号は、命を守る方法を紹介する。

【図】水難事故と山岳事故での死者・行方不明者の推移はこちら

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 川の事故が後を絶たない。

 警察庁の統計では例年、700~800人前後が水難事故で死亡・行方不明となっている。

 2020年のデータを見ると、事故が発生した場所は海が計722人のうち362人(50.1%)と最も多いが、川も254人と35.2%を占める。5月5日には愛知県豊田市の矢作川(やはぎがわ)で、川遊びをしていた19歳の男性が流され死亡した。

 河川に関する調査・研究をする「河川財団」(東京都)主任研究員の菅原一成さんは、川はどこもリスクがあるとした上で、事故が集中する「水難事故多発地点」があると指摘する。

「一つは、川が曲がっているところや大きな岩などがある付近です。流れが複雑になり、川底に向かって引きこむような流れが生じることもあります。そのように強く引き込まれると、水泳の選手並みの泳力をもってしても流れに逆らって泳ぐことはできません」

 あと一つは、水を一時的にせき止める取水堰(ぜき)やブロックなど「河川工作物」と呼ばれる付近。穏やかそうに見えても、周辺が急に深くなるなどしていて危険性が見えにくい。こうした場所には近寄らないことが大切。その上で、川で遊ぶ際は必ずライフジャケットを着用し、親子で遊ぶ時は流された時を想定して親は子どもより下流側にいることが重要だとアドバイスする。

■仰向けに浮く「背浮き」

 では、川で流された場合はどうすればいいのか。菅原さんは、(1)立たない(2)元いた場所に戻らない(3)流れの穏やかな場所に避難する──ことが大事だと指摘する。

 足がつきそうな場所では意識的に立とうとするが、そのとき足が石の間に挟まれるなどすると川の流れの力を全身に受ける。例えば、流速1メートルだと40キロ近い力がかかり、ライフジャケットを着けていても水中から顔を出すのが困難となる。また、流された場所に戻ろうとすると、流れに逆らうことになりリスクが増す。立ったり戻ったりせず、足を下流に向けて浮かぶ「ラッコ」の姿勢で、流れの緩やかな場所を目指して避難することが大切だという。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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