タイムズスクエアの一角を埋め尽くした「アジア系女性に正義を!」集会。全米12都市で開かれた/3月16日、米ニューヨーク
タイムズスクエアの一角を埋め尽くした「アジア系女性に正義を!」集会。全米12都市で開かれた/3月16日、米ニューヨーク

 米国でアジア系市民へのヘイト被害が相次いでいる。その被害者は女性に集中している。そんな状況に市民が立ち上がり始めた。AERA 2022年5月16日号の記事から紹介する。

【写真】アジア系女性の頭を125回以上殴る加害者の防犯カメラの映像はこちら

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 アジア系に対するヘイト犯罪は2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった直後から激増した。トランプ大統領(当時)は新型コロナを「チャイナ・ウイルス」と呼び、今日に至るまで繰り返し発言している。感染と死亡者の増加による不安や恐怖が市中で高まる中、中国系と見間違えられるアジア系全体に怒りが向けられた。

 米連邦捜査局(FBI)によると、アジア系に対するヘイト犯罪は20年、前年比73%増の279件となった。

 アジア系というと様々な国の人が含まれるが、一般的な米国人にとっては、インド、アフガニスタンなど南アジア系、インドシナ半島などの東南アジア系、中国、日本、朝鮮半島など東アジア系といった見分けがほとんどつかないという(米紙ワシントン・ポストによる)。

■日本人もターゲット

 このため、攻撃の対象として、日本人も例外ではない。

 ニューヨークで活躍するジャズピアニストの海野雅威さんは20年9月、8人の若者に暴行され、肩などに重傷を負った。一時はピアノの演奏さえ危ぶまれたが昨年、復帰を果たした。このほか、在ニューヨーク日本総領事館によると、電車の中で2人組の男女に頭を窓に打ち付けられ、負傷した日本人女性もいる。新型コロナの感染拡大は一服したとはいえ、アジア系女性や筆者を含めた日本人や日系女性の多くは、今でも日没後の外出は控えている。地下鉄ホームや車両内でも周囲の状況に目を光らせている状況だ。

 ヘイト犯罪と認定されるのが困難なのも問題になっている。ビデオや目撃者の証言において、アジア系に対する人種差別と認識できるような言葉を加害者がハッキリと口にしていなければならないからだ。例えば「日本」「中国」「アジア」といった特定の国・地域について言及している必要がある。

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