文筆家・ツレヅレハナコさん(イラスト:本人提供)
文筆家・ツレヅレハナコさん(イラスト:本人提供)

 読書を通して食の奥深さを堪能してはいかがだろう。AERA 2022年5月2-9日合併号の特集「今読みたい本120冊」では、各ジャンルの専門家がおすすめの本を10冊ずつ紹介。その中から、文筆家・ツレヅレハナコさんが選んだ「食」の本をお届けする。

【ツレヅレハナコさんオススメの10冊はこちら】

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 1千冊近くの食の蔵書から、悩みながら選びました。

 4冊はプロの料理家さんや飲食店の料理人さんの腕と個性に驚いたレシピ本。6冊は旅行記やエッセイ、写真、料理本のデザインを通して、食の楽しさと奥深さを共有できる本です。

 特にレシピ本は、おいしさを伝えるため、著者と編集者、写真家、デザイナーがアイデアと技を注ぎ込んでいます。「めっちゃおいしいよ、面白いよ」と熱量が伝わってくる本と出合うと、すごくうれしくなります。

『中華つまみ』は若手料理家らしい勢いとセンスがひらめいていて、思いつきそうで思いつかない中華アレンジがいいんです。簡単だし、わくわくして作っています。

『ニッポンのおかず』は、日本を代表する料理家さんたちのレシピが満載。故郷の味や料理への考え方を紹介したエピソードも読み応えがあります。

 プロのレシピのいいところは、おいしさの基準がわかること。繰り返し作ると味覚が育ち、料理上手になるんですよ。

『遺したい味』は、尊敬する平松洋子さんと姜尚美さんが東京と京都の名店を往復書簡で教え合っています。向田邦子さんのエッセイは、食いしん坊なところにうなずくばかり。この2冊は、文章の描写力にも憧れます。
『食べ歩くインド』は、ガイド本としても秀逸。食材や料理の背景まで網羅しているので、文化論としても面白いです。

『ブタとともに』は香川県にあった養豚場の日々を追った写真集。おっちゃんとブタの穏やかな交流が愛おしいんです。

 食を通すと、時代や国が違っても身近に感じますよね。この世に残したいと思わせる味やお店って大切だし、奇跡みたいな存在。そんな出合いのある本をたくさん見つけてほしいです。

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