この10年で小中学校の不登校者数は1.6倍に増えた。コロナの影響によるストレスもあり、心身症を発症するリスクは高まっている(写真:gettyimages)
この10年で小中学校の不登校者数は1.6倍に増えた。コロナの影響によるストレスもあり、心身症を発症するリスクは高まっている(写真:gettyimages)

 環境が大きく変わる新学期は、学校への「行き渋り」が始まる子どもも少なくない。我が子がそうなった時どのように対応すれば良いのか、専門家に聞いた。AERA 2022年4月25日号の記事を紹介する。

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 子どもの不登校や心身症に詳しい堺咲花(さかいさきばな)病院(大阪府堺市)の村上佳津美医師は、不登校を予防するためにも受診を勧める。

「体に表れている症状を受け止めて小児科を受診してほしい」

 不登校になる前にはなんらかの身体症状を訴えるケースがほとんどで、例えば都内在住の女性(39)の今春小学3年になった娘は、1年生の登校初日に学校で嘔吐(おうと)し、その後も体調不良を申し出た。このように、吐き気を訴えることもあれば、頭痛や腹痛になることもあり、心身症の疑いがあるという。

 心身症はストレスなどにより引き起こされる体の病気だ。発症には不安な気持ちや、社会的因子が関係するが、精神疾患とは区別される。コロナの影響で正常な学校生活が送れない今は、ストレスが蓄積されて心身症を引き起こしている可能性もあると、村上さんは指摘する。

「学校生活は勉強だけでなく友達と遊ぶことも含まれますが、今はそれが思うようにはできません。通常よりもストレスを生む可能性は高いです。低学年の子どもの場合、病院に連れていってもらっただけで“親は自分の症状を理解してくれている”と感じて安心し、学校に行けるようになることもあります」

 思春期になると外からのストレスに加えて自律神経のバランスも影響する。日本小児心身医学会によれば、心身症が最も増加するのがこの思春期。適切な指導や治療をしないと、不登校となり、症状を成人まで持ち越す恐れもあるという。

AERA 2022年4月25日号より
AERA 2022年4月25日号より

 今年高校に入学した都内に住む男子生徒は、中学2年の頃から徐々に学校に行けなくなった。朝になると頭痛や吐き気に襲われ、起き上がることができない。病院を受診すると「起立性調節障害」と診断された。心身症の一種で自律神経の乱れからくる。中学生では5人に1人が発症するとも言われている。母親は当時をこう振り返る。

「たまたま周りに同じ病気になった子を持つ人がいたので、早い段階で病院に連れていけました。知らなかったら、無理矢理起こしたりして私もイライラしていたと思います」

 イライラするだけならいいが、場合によっては親のイライラが子どもの症状を悪化させることもある。

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