新聞はスピード勝負

 新聞社でも校閲者が活躍している。朝日新聞校閲センターの加藤正朗さん(32)は入社8年目の校閲記者だ。ローテーション制で各面を担当。ある日はスポーツ面、翌日は国際面などと多様なジャンルへの対応が必要となる。そして、新聞校閲はスピード勝負になることも多い。夜に大きな事件や事故が起こり、翌日の朝刊記事を差し替えるようなケースもザラだ。

「大きな事件が起きると、1時間のうちに何度も原稿が更新されて内容が全く変わってくることもあるし、締め切り5分前に新たな記事が飛んでくることもあります。まず全体を読んで大きな誤りがないか確認し、あとは時間の許す限り1カ所ずつ気になるところをつぶしていきます」

 時間に余裕がある記事の場合は、読者目線で「こういった内容を付け加えては」「構成をこう変えたらわかりやすいと思う」との提案をすることもある。

「それが採用されて記事がよくなったなと思えると、仕事をしている実感が湧く。校閲は取材記者と違って記事に名前は入りませんが、自分も紙面をつくる一人だと確かに感じられます」

 加藤さんは中堅の息に差し掛かり、記事を読むスピードも速くなってきた。

「ただ、慣れ過ぎもよくない。凡事徹底を忘れずにいたいです」

 書籍や報道の陰には、優れた校閲者がいる。もちろん、小誌もプロの校閲者が確認している。この原稿中に2カ所誤字を含めてみた。校閲者にはしっかり指摘されたが、そのまま残しておいた。お気づきになりましたか?(答えは、本文の最後に)

(編集部・川口穣)

AERA 2022年4月18日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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