ビジネスで動画を作る機会が増えている(撮影/写真部・高橋奈緒)
ビジネスで動画を作る機会が増えている(撮影/写真部・高橋奈緒)

 わかりやすいプレゼンで人を惹きつけるYouTuber。その話し方はビジネスシーンでも活用できるところは多い。コミュニケーションのプロが注目するのは中田敦彦さんだ。AERA 2022年4月11日号の記事から。

【図】YouTuberに学ぶ話し方と見せ方とは

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 動画はビジネスでも多く使われるようになってきた。動画制作などのマーケティングを手掛けるCandeeが111人を対象に行った昨年11月の調査では、約9割がコロナ禍でライブ配信を視聴するようになったと回答した。興味のあるジャンルは1位が「株主発表会/決算説明会」(58.6%)、3位が「商品発表」(53.2%)。企業による配信を「週に2~3日程度視聴」「毎回視聴」の回答は75.7%を占めた。AERAでも4月から動画配信を始める。

 つまり、動画での話し方スキルを求められるのは、YouTuberだけではないということだ。コツはあるのだろうか。

「YouTuberには企業人が見習う点がたくさんあります」

 千人以上の経営者や企業幹部にコミュニケーションノウハウを指導し、「伝説の家庭教師」と呼ばれる岡本純子さんは言う。

AERA 2022年4月11日号より
AERA 2022年4月11日号より

■テンションと勢いある

 注目するのは、チャンネル登録者数460万人の「YouTube大学」を開設する中田敦彦さんだ。

「中田さんは冒頭から大袈裟なアクションと表情、はじけるようなテンションで勢いがあり、一気に聴衆を引き込みます。この手法は、ビジネスで動画配信をする際にも活用できます」

 もちろん、「徐々に盛り上げる」方法もある。だが、現代の視聴者は盛り上がりまで待ってはくれない。つまらなければ即チャンネルを変えられてしまう。

「冒頭30秒で視聴者の心をわし掴みにしなければなりません」

 岡本さんの著書『世界最高の話し方』を取り上げた際、中田さんは「話し方って覚えたくない人いませんからね!」「恋も仕事も制するにはコミュニケーション!」「話し方さえ制すれば、人生が制圧できる!」と、心に刺さるワードを畳み掛けるように連打した。

「相手が受け取りやすいボールを投げ、キャッチボールを続けようとしている点も見逃せません。動画に限らずよい話し方の基本ですが、日本人はなかなかできない。『そうだよね』『なるほどね』『聞きたくない?』『なんででしょうか?』と問いかけを織り交ぜ、聞き手を置き去りにしないことが必要です」

(ライター・羽根田真智)

AERA 2022年4月11日号より抜粋