「老後に2千万円足りない」騒動も影響してか、公的年金だけでは不安だという人がiDeCoに加入するケースが急増している(gettyimages)
「老後に2千万円足りない」騒動も影響してか、公的年金だけでは不安だという人がiDeCoに加入するケースが急増している(gettyimages)

 個人型確定拠出年金「iDeCo」の加入者数が急伸している。今年は段階的な制度改正が実施される。どんなメリットがあるのだろうか。AERA 2022年4月11日号の記事から紹介。

【図】春からiDeCoの制度が変わる

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 2002年1月に制度運用が始まった個人型確定拠出年金。しばらくなじみが薄かったが、16年9月にiDeCo(イデコ)という愛称がつけられてから急ピッチで加入者が増えている。運営管理機関連絡協議会の「確定拠出年金統計資料(21年3月末)」によれば、16年3月末時点で26万人弱だった加入者数が21年3月末には194万を突破。5年間で7.5倍超もの伸びを示している。

 そもそも確定拠出年金とは、公的年金を補強する手段だ。会社が従業員の福利厚生として導入する「企業型」と、自営業者などが任意で加入する「個人型」という二つの受け皿が用意され、後者はiDeCoの愛称で知られるようになった。

 確定拠出年金のメリットとして、積立時・運用時・受取時それぞれの税負担軽減が挙げられる。受取額は自分で選んだ金融商品の運用実績によって増減するが、むしろ好都合と考える人も少なくない。高齢化社会が進むなか、現役世代が負担した掛け金がシニアに給付される「リレー方式」の公的年金に不公平感を抱いているからだ。

■段階的に制度が変わる

 iDeCoが急速に普及し始めた背景には、17年の制度改正で、公務員や専業主婦も加入できるようになったことがある。今年も段階的に制度改正が実施される予定で、さらなる加入者の拡大が見込まれる。

AERA 2022年4月11日号より
AERA 2022年4月11日号より

 改正ポイントは三つ。それぞれ実施時期が異なるため、時系列で取り上げていこう。

 まず4月1日に改正されたのは、受け取り開始年齢の拡大だ。従来のiDeCoでは「60~70歳」の間で希望の年齢を選ぶようになっていたが、これが「60~75歳」に改められた。同じタイミングで公的年金の繰り下げ(受け取り開始の延期)も75歳まで可能となり(従来は70歳)、歩調を合わせたものと目される。

 もっとも、確定拠出年金アナリストで情報ポータルサイト「iDeCoナビ」を運営する大江加代氏はこう忠告する。

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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