■学校教育の範囲の違い


 ただ、単純に「垂直型」「平行型」と分類してしまうのも難しい。2014年に発表された仏の社会学者ギャエル・ブリュレ氏らの論文「Participatory Teaching and Happiness in Developed Nations」に、先進37カ国の参加型教育のランキングがある。参加型教育はグループワークなどに重点を置いた、いわゆる「横の線」を大事にするアプローチだ。このランキングで仏は最下位の37位なのだが、実は日本もほぼ変わらない35位に位置している。


 前出のメリユー氏は仏の学校は子どもを教育する場というよりも「知の伝達の場」だという。もしかすると協調性というキーワードからみた日仏の違いは縦と横という観点に加えて、学校教育の範囲の違いにも見いだせるのかもしれない。


 子どもの教育とはもちろん、知の伝達だけではない。日本では食育や掃除の仕方、他者との関わり方などを学校という場で学ぶ。一方の仏では、広い意味での教育は家庭や課外活動、休暇などさまざまなところに分散されているイメージがある。メリユー氏は、仏では知の伝達に必要とされるのは「秩序のみ」で、それ以外は学校外で身につけるものだという考え方が強いとみる。


 協調性を育むというのは、調和のとれた社会を目指すためには必要なことだろう。しかし、一歩間違えれば相互監視のようになり、同調圧力が強まり周りの目が気になる社会になってしまうところが難しい。一方でメリユー氏は仏の教育現場はもう少し「知の伝達」以外のことも教えるべきであり、それが今、仏で深刻化している不平等や格差といった問題の解決にもつながるはずだという。子どもの教育を誰がどこまで担うべきなのか。それは社会が目指す姿にも密接につながっていると感じる。(フリーライター・大野舞)

AERA 2022年4月4日号