フランスの小学校の様子。教師の教育の自由が重視されているため、同じ学年でも担任の先生の方針によって林間学校に参加するクラスとそうでないクラスが出ることも(photo gettyimages)
フランスの小学校の様子。教師の教育の自由が重視されているため、同じ学年でも担任の先生の方針によって林間学校に参加するクラスとそうでないクラスが出ることも(photo gettyimages)

 教育で何を重視するか──。フランスと日本では大きな違いがあるようだ。小学生の子どもとフランスから帰国した筆者が、実体験を交えて違いの一端を探った。AERA 2022年4月4日号の記事を紹介する。

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「フランスの小学生に協調性ですか……うーん、ないですね」

 これは、仏の学校では子どもに協調性をどうやって教えているのか、と日本の小学校の先生に聞かれた際の仏人の夫の回答である。

 筆者は去年の夏に小学2年生の双子を連れて仏から帰国した。それまで仏の小学校にしか通ったことのなかった2人を、日本の公立小学校に入れて半年が経った。言葉はもちろんだが、仏と日本の学校では子どもに求められることや、学校のあり方など異なる点が多々ある。その一つが「協調性」だ。

 協調性というと、運動会や音楽会を思い起こすのではないだろうか。一方、仏の小学校には運動会どころか入学式や卒業式もない。小学校の先生はあくまで「授業」を担当する教師であるため、休み時間や給食の時間には教室からいなくなる。放課後の部活動の指導なども一切しない。だから子どもたちが日本の小学校に通い始めてすぐに運動会の練習が始まり、久しぶりに日本に帰ってきたことを実感したのだった。

■友だちに注意される

 学校生活にもわりとすぐに馴染んだようでホッとしていた矢先、娘が納得できない様子で帰ってきた。

「私がちょっと教室で席を立ったら、お友だちに注意された。しかもそれを先生に言ったんだ」

 という。「歩き回ったらダメというのが規則なんじゃないの」と思わず言いたくなったが、問題はそこではなかった。

 話を聞いてみたところ、授業中に用事があって先生が少し教室を空けた時、娘を含めた何人かが教室内を立ち歩いたそうだ。そして一人の女子児童がその子たちを注意した上で、帰ってきた先生に報告をした、という。娘は先生に怒られたからではなく、友だちに注意をされ、先生に言いつけられたということが不服だったのだ。

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