皇居・御所「大広間」で、成人にあたって初の記者会見に臨む天皇、皇后両陛下の長女愛子さま/2022年3月17日
皇居・御所「大広間」で、成人にあたって初の記者会見に臨む天皇、皇后両陛下の長女愛子さま/2022年3月17日

 天皇家の愛子さまが3月17日、成年を迎えられての記者会見に臨んだ。20歳の愛子さまは、ウクライナ情勢に父の言葉を引用し心境を伝え、眞子さんにはエールを送った。AERA 2022年4月4日号から。

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 poisedを手元の英和辞書で引いてみた。「落ち着きのある、自信に満ちた」とあった。が、それ以上のニュアンスがあると教えてくれたのは、ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社長のロッシェル・カップさん。愛子さまの記者会見がpoisedだったと、日経電子版への投稿(Think! 3月18日)で指摘していた。

 天皇、皇后両陛下の長女愛子さまの成年皇族となって初めての会見。カップさんは、それを見てpoisedと感じ、それを慎み、泰然、しとやか、エレガントという日本語にした。「愛子さまのこの記者会見での振る舞いはこの全てが当てはまると思います」

 カップさんが端的に表現した愛子さまの素晴らしさ。付け加えるなら、強さと賢明さがあった。そして、どの言葉も心からのものだと感じられた。それが、今回の会見のいちばんよかったことだったと思う。

「平和」への強い願い

 ウクライナ情勢を「どうご覧になっているか」という問いかけが、会見のほぼ最後、関連質問としてあった。愛子さまはまず「ウクライナ国内で多くの尊い命が失われていることに非常に心を痛めております」とし、2月の記者会見での天皇陛下の言葉を伝えたい、メモを見ますと断った。そして「国や地域の境界を越えて、お互いを認め合う、平和な世界につながってほしい」と読み、「私もこのお考えと同じ思いです」と述べた。

 記者は質問の際、愛子さまが中学の卒業文集で世界平和を願う作文を書いたことに触れていた。原爆ドームや平和記念資料館を訪ねた際の、「感想」という範疇(はんちゅう)を超えた文章だった。その指摘を受け、愛子さまはこう述べた。「その時に見た、目を覆いたくなるほどのとても凄惨(せいさん)な光景を今でもはっきりと覚えております。その時に平和の尊さを改めて強く感じまして、私は今でも平和への強い願いを持っております」

 激戦地への「慰霊の旅」をライフワークとした上皇陛下と美智子さま。天皇陛下と雅子さまを経て、愛子さまに。その自覚を持って述べていることが、確かに伝わってくる。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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