新型コロナウイルス感染と脳との関係を調べた研究が報告されている
新型コロナウイルス感染と脳との関係を調べた研究が報告されている

 各国の研究チームが新型コロナウイルス感染者のその後の健康状態を調査。その結果、脳神経細胞の減少による認知機能が低下することがわかった。さらに年齢や重症度について分析した。AERA 2022年3月28日号から。

【図】肺炎経験者が新たに認知症を発症した率はこちら

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 脳の容積が小さくなったり、脳神経細胞が減ったりすることは、認知機能の低下につながる可能性が大きい。英オックスフォード大学の研究チームの調査でも感染者は認知機能が低下する傾向にあることがわかったが、中国の研究チームの千人規模の感染者の認知機能を1年間、調べた研究では、感染時に重症だった人ほど、認知機能が低下しやすいことがわかった。

 中国・重慶市の第三軍医科大学などの研究チームは、武漢市の病院に入院し、2020年2月10日~4月10日の間に退院した60歳以上の感染者の認知機能を調べた。退院半年後と1年後の2回、調べることのできた1438人と、配偶者のうち感染していない438人の認知機能の変化を比較した。感染体験者のうち260人が重症だった。

 研究チームが今年3月に米医師会の医学誌「JAMAニューロロジー」に発表した論文によると、電話インタビューで認知機能を調べる国際的に使われている検査を用い、認知機能を調べた。40点満点で、12点以下は認知症、13~20点は軽度認知障害とされる。

 退院12カ月後に認知機能が低下していた人は、重症だった感染経験者では80人(30.77%)だったが、重症以外の感染経験者では56人(4.75%)で、未感染の配偶者と同等だった。

AERA 2022年3月28日号より
AERA 2022年3月28日号より

コロナ由来の肺炎でも

 退院12カ月後の時点で、重症だった感染経験者の39人(15.0%)が認知症、68人(26.15%)が軽度認知障害とされた。一方、重症ではなかった感染体験者では、認知症が9人(0.76%)、軽度認知障害が63人(5.35%)だった。未感染の配偶者は、認知症が0.68%、軽度認知障害が5.02%で、重症以外の感染経験者とほぼ同じだった。

 年齢や性別、持病などによって調整して比較したところ、重症だった感染経験者が退院12カ月後に認知症になるリスクは、未感染者に比べて約9倍高いと推計された。

 研究チームは、分析結果を受け、こう指摘している。

「新型コロナウイルスへの感染者に対して、できるだけ早期に、認知機能を低下させないような取り組みが必要だ」

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