エンゼルスの大谷翔平は昨季、打っては46本塁打、投げては9勝(2敗)の「二刀流」の活躍で、ア・リーグ最優秀選手(MVP)に輝いた(gettyimages)
エンゼルスの大谷翔平は昨季、打っては46本塁打、投げては9勝(2敗)の「二刀流」の活躍で、ア・リーグ最優秀選手(MVP)に輝いた(gettyimages)

 大リーグ機構と選手会が、交渉が難航した新労使協定を結ぶことで合意した。1週間遅れでの開幕。もめた理由は何か。選手にはどんな影響があるのか。

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 新労使協定をめぐる交渉が難航していた大リーグ機構(MLB)は3月10日、選手会と合意したと発表した。大リーグ公式ホームページや米国の報道によると、(1)最低年俸が57万500ドル(約6700万円)から2022年は70万ドル(約8300万円)に、以後26年には78万ドルまで上昇、(2)新たに上位100選手に与えられるボーナスプール(総額)は5千万ドル(約59億円)、(3)課徴金が発生する年俸総額は22年が2千万ドルアップの2億3千万ドル(約271億円)で、以後年300万~400万ドル上げ、26年は2億4400万ドル──などが合意内容として記されている。

富の分配をめぐる対立

 従来通りシーズン162試合の実施も決定した。13日からキャンプインし、17日からオープン戦。今季開幕は当初の予定より1週間遅れの4月7日となった。

 昨年12月2日から続いていた労使交渉がなぜ3カ月以上も長引いたのか。端的に言えば「富の分配」をめぐる対立だった。(1)最低年俸、(2)ボーナスプール、(3)年俸総額に課徴金が発生する限度額で双方の主張に隔たりがあった。ボーナスプール、年俸総額の課徴金制度は日本のプロ野球に導入されていないシステムなので分かりにくいかもしれない。

 ボーナスプールは活躍した若手選手たちの「救済措置」だ。大リーグに昇格したばかりの選手は3年目終了時まで年俸調停権を持っていないため、活躍に見合う高額の年俸を受け取ることが難しい。この「不平等」を解消するための新制度だ。各球団が資金を拠出し、活躍した上位選手に分配額を決める。労使共に制度導入で合意していたが、資金総額で大きな隔たりがあった。選手会側は1億500万ドル(約124億円)に対し、オーナー側の提示は1千万ドル(約12億円)。金銭面で10倍以上の開きがあった。

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