AERA2022年3月21日号より
AERA2022年3月21日号より

 今持っているスキルに加えて、新たな知識や技能を獲得するスキルの足し算「リスキリング」に取り組む人が増えてきた。ビジネスパーソンたちは何を学び、どう仕事に生かしているのか。社会人の学びの実例を紹介しよう。「リスキリング」を特集のAERA 2022年3月21日号から。

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 オンライン学習プラットフォームSchoo(スクー)で広報を務める大金歩美さん(33)は、広報職を核に少しずつスキルを広げてきた。23歳でPR会社に入社して以来、2度転職したがキャリアは広報一筋。広報は自他ともに認めるはまり役だ。一方で、焦りも感じていたという。

「スキルの幅が広がらず、このままでいいのか不安でした。これからも広報としてやっていくためにも、新たな知識を身につけたいと思うようになりました」

 芸術系の企画を開催するクライアントを担当していたこと、自分自身の興味にも近いことから、デザイン専門学校に入学した。週3回、夜に2時間半授業を受け、休日も学校に通った。学んだのはデザインやアートの教養だった。

「一緒に仕事をするデザイナーやアーティストとの『共通言語』を身につけたかった。表現方法を多面的に考える課題も多く、複眼的な思考の癖もつきました」

 次に取り組んだのが、コンテンツ制作スキルの獲得だ。

「配信サービスやオウンドメディアなど、直接顧客に届けるアプローチが増えました。今の時代は、メディアにリリースを出すだけでなく、自らコンテンツをつくることが求められるようになったんです」

 趣味の写真の腕を磨き、知人が働くウェブメディアでライターの経験も積んだ。今では自社コンテンツの制作のほか、副業で雑誌にも写真や記事を寄稿する。ライターを経験したことで、メディアの立場に立った企画提案もできるようになった。

■業務効率が上がった

 中学校で保健体育の教員を務める五十嵐夕介さん(38)はリスキリングを課題解決に結びつけている。保健体育は使う器具が多く、毎年新たな物品も購入するので、体育準備室はとにかく散らかりがちだったという。探し物をする時間が長く、業務効率が悪かった。そこで学んだのが整理収納アドバイザーだ。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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