AERA3月7日号より
AERA3月7日号より

「確かに五木寛之さんの『孤独のすすめ』など、『孤独でいるのは素敵だぞ』という本はよく売れていて、ニーズは高いんです」

 なぜ、中高年男性は「孤独の美学」に引かれるのか。岡本さんは英語で言う「Solitude」と「Loneliness」が混同されている点を指摘する。

「ソリチュードとは一人でも楽しい状態。言わば個人の個と独立の独で『個独』。これは本当の孤独ではないんです。孤独とはロンリネス、つまり耐えられないほど不安で寂しい状態で、孤児の孤に中毒の毒で『孤毒』。日本ではそれがごっちゃになり、何となく『一人で強く生きることが孤独である』と美学のように認識されている気がします」

 ただ、人は繋がりたい欲求を誰もが本能的に持っている。これを「孤独も悪くないんだから」と抑え込んでしまうことは、心身にとって悪影響が大きい。そう岡本さんは警鐘を鳴らす。

「こんな指摘に危機感を共有して取材に来てくれるのは若い記者ばかり。中高年とのギャップは大きいです。若い世代が現実に抱えている、支えてくれる存在が誰もいない孤独。人として生きていく価値がないと感じるその孤独。そのつらさを、孤独の美学を言う方々は本当にわかっていますか?と言いたいです」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2022年3月7日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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