毎朝5時半から米国スタッフとのオンラインミーティングに臨む。たまに外に出て気分転換(撮影/写真部・松永卓也)
毎朝5時半から米国スタッフとのオンラインミーティングに臨む。たまに外に出て気分転換(撮影/写真部・松永卓也)

■エンジニアの追っかけ

 サイバーエージェント時代は、講演などで来日する著名エンジニアの追っかけをしていた。飲み会にまでついていき、最後はカラオケに突入する。

「どうしたら日本を飛び出せるか」。いつも考えていた山下。近澤が「共同創業者としてエンジニアリングを担当してほしい」と頼むと、山下は二つ返事で話に乗った。

 2人で翻訳ツールの改良を続けたが、反応はいまひとつ。近澤は2年以上続けてきた開発を止める。そして手分けしてサンフランシスコで約60社のエンジニアにインタビューし、「いま何に困っているか」を尋ねた。

 回答が集中したのは「ソフトウェアのテスト」だった。

 現代のIT社会では日々、夥(おびただ)しい数のソフトが生み出されている。一つのプロダクトが生まれても、それで終わりではなく、延々と改良が加えられる。例えばネットフリックスは、自社ソフトに「1日に1千個以上のパッチを貼る(改良する)」と言われている。あなたがドラマを見ている間にも、同時進行でソフトが改良されているのだ。

 改良のためのソフトもきちんと作動するかテストが必要だ。そのテスト作業が工数で言うとソフト開発全体の3分の1を占めている。テストの市場規模は130兆円とも言われている。(敬称略)(文/ジャーナリスト・大西康之)

AERA 2022年3月7日号より抜粋