ワリエワはフリーの演技後、落胆した
ワリエワはフリーの演技後、落胆した

 ドーピング問題に揺れる中で始まった北京五輪フィギュアスケート女子フリー。五輪史上に残る、異様な雰囲気のなかでの戦いとなった。最終滑走のワリエワはフリーの演技後に落胆の表情を見せた。AERA 2022年2月28日号の記事を紹介する。

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 歴史に残る劇的な一戦となった。ドーピング問題に揺れたカミラ・ワリエワ(15)は、まさかの転倒で4位、坂本花織(21)はショートプログラム(SP)、フリーとも完璧な演技で3位となり、団体戦に続く二つ目のメダルを獲得した。

 激震が走ったのは2月9日。昨年12月のドーピング検査でワリエワから陽性反応が出たと一部メディアが報道した。一時的な資格停止処分となったものの、ワリエワ側が抗議してロシア側が処分を解除。国際オリンピック委員会(IOC)はスポーツ仲裁裁判所に決定不服の申し立てをしたが、14日の裁定は五輪出場を認める内容。IOCは、ワリエワが上位3位に入った場合は暫定順位のためセレモニーを行わないとした。

 ワリエワはロシアのテレビの取材に対し涙を見せた。

「出場できることはうれしいけれど、精神的にとても疲れました。できる限り調整したいです」

 しかし出場が認められたことで、世論の反発を招いた。15日のSP、会場には北米の社会部系の記者まで押し寄せた。ワリエワはトリプルアクセル(3回転半)で着氷が乱れたものの首位、ノーミスの坂本は3位発進。北米の元選手が「カオリが首位であるべきだ」と発言するなど逆風が強まった。採点はルールにのっとり、ワリエワの芸術性やジャンプの質を高評価したのにもかかわらずだ。

 17日のフリー、最終グループが始まる。4回転5本を跳んだアレクサンドラ・トルソワ(17)がその時点で首位。ロシアメディアと選手団の熱狂が頂点に達した。異様な空気のなか登場した坂本は覚悟を決めた。

「団体戦よりもショートよりも落ち着いていました。変な緊張はありませんでした」

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