無印良品/青森県の農家から仕入れた「不揃いりんご」は、あえてつる回し作業をせずに育てた(photo 無印良品提供)
無印良品/青森県の農家から仕入れた「不揃いりんご」は、あえてつる回し作業をせずに育てた(photo 無印良品提供)

 近年世界中で浸透してきた「フードロス削減」の考え。この考えに基づき、日本でもあえてふぞろい品を販売する企業が増えてきている。AERA 2022年2月21日号の記事を紹介する。

【写真】美味しさは変わらない!江崎グリコの“ふぞろいカプリコ”がこちら

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「見た目」に完璧を求めない柔軟さは少しずつ広がっている。

 大手菓子メーカーの江崎グリコは、食品ロス対策の一環として、2050年までに15年比で食品廃棄物を95%減らすことを目指している。

 その一つに選ばれたのが、同社の人気商品「カプリコ」だ。

 昨年10月に発売された「ジャイアントカプリコ」のふぞろい品の詰め合わせ。いちご味10本入りで、正規品よりも少しだけお安くなっている。

 たくさんの商品があるなかで、なぜカプリコだったのか。商品を手掛けたダイレクトマーケティング部の木下翔平さんはこう振り返る。

「カプリコの頭にあたるチョコを膨らませる工程は制御しきれないので、ふぞろい品の発生率が高いという事実がありました。もう一度溶かして製品の原料にしたり、コーンは飼料としてリサイクルしたりしていましたが、なるべくお客様に食べていただくことはできないかと考えたことがはじまりです」

 通常、同社で商品を企画する際にかかる平均期間は約半年。すでに商品として成立していたカプリコのふぞろい品販売まではトントン拍子かと思いきや、その倍以上の時間がかかったという。木下さんは言う。

「ふぞろいのレベルをどこで定義するかが大変でした。見た目のふぞろいさをどう捉えるかは個人によって異なるので、重量や欠けの範囲などをもとに社内の良品基準を再規定しました」

 苦心すること1年半、ついにジャイアントカプリコのふぞろい品がお菓子界に飛び出した。

江崎グリコ/「チョコが割れてるカプ~」「でも美味しさはかわらないカプ!」。パッケージには、ふぞろい品の説明がポップに記されている。「ふぞろい品」が同社で発売されるのは2品目(photo 江崎グリコ提供)
江崎グリコ/「チョコが割れてるカプ~」「でも美味しさはかわらないカプ!」。パッケージには、ふぞろい品の説明がポップに記されている。「ふぞろい品」が同社で発売されるのは2品目(photo 江崎グリコ提供)

 ふぞろい品の発生頻度は気温などで左右されるため、通常品のように安定供給はできない。そのため、現在はオンラインショップや、全国15カ所に展開する同社のアンテナショップ「ぐりこ・や」で不定期に販売している。

 今や世界共通の課題となったフードロス削減。だが、その言葉が生まれる前から、その価値観を体現してきたのが、無印良品などを展開する良品計画だ。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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