中国が威嚇のために台湾に接近させる中国空軍爆撃機(写真:台湾空軍提供)
中国が威嚇のために台湾に接近させる中国空軍爆撃機(写真:台湾空軍提供)

「台湾有事」や「台湾危機」が指摘されている。北京冬季五輪後に中国が踏み切るか。最近の台湾周辺での米中の動きを検証し、それぞれの思惑を検討した。AERA 2022年2月14日号から。

【写真】アメリカ原子力空母カール・ビンソン

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 トランプ政権が中国を仮想敵国筆頭に据え、台湾を軍事的に支援する姿勢を強めたアメリカの国防戦略。これについては軍事予算を縮小しつつあるバイデン政権といえども、これまでのところは引き継ぐ姿勢を示している。ただ、アメリカの台湾を支援する姿勢が強まると、それに対応して中国の台湾への軍事的威嚇(いかく)も強化されている。

 例えば昨年の後半には、しばしば数十機にものぼる軍用機を台湾の南西方面上空や、台湾とフィリピンの間のバシー海峡方面に接近させている。そのような中国の動きについて、アメリカの反中勢力は「中国による台湾侵攻が近づいている」と国際社会に警告を発し続けている。

 日本では、アメリカの対中強硬姿勢と台湾有事をめぐる警告に付随する形で、反中・嫌中政治家などが「台湾の防衛は日本の防衛」などと主張。中国が台湾に軍事攻撃を仕掛けた場合、日本はアメリカによる台湾防衛行動を支援する、すなわち台湾救援を大義名分とした米中戦争に参戦するという姿勢を打ち出している。

■中国は五輪前に控える

 2022年に入っても中国軍は毎日のように、主として偵察機など1~3機を台湾の南西方面上空に接近させている。中国軍はこのような目に見える形での威嚇と並行して、これまで通り、極超音速兵器を含む各種ミサイルや軍艦を中心に、台湾攻撃戦力ならびにアメリカ軍が接近するのを阻止する戦力の強化に邁進している。

 ただし、北京冬季五輪の開催を前にして、昨年は何回か実施した、数十機にものぼる航空機による威圧は控えているようだった。

 しかし1月23日、アメリカ海軍は航空母艦や巡洋艦、駆逐艦で構成される空母艦隊のカール・ビンソン空母打撃群とエイブラハム・リンカーン空母打撃群の2セットを、フィリピン海からバシー海峡を通過させて南シナ海に送った。

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