瀬川さん(右)とエコプロコート社長の伊藤さん。同社はプロアイスホッケー選手をデュアルキャリア採用した前例もある(photo 小野ヒデコ)
瀬川さん(右)とエコプロコート社長の伊藤さん。同社はプロアイスホッケー選手をデュアルキャリア採用した前例もある(photo 小野ヒデコ)

「保護犬を支援する熱意に感心し、共感した。何より瀬川さんの人間性に惹かれ、その場でスポンサー契約を結ぶ決断をしました」(伊藤さん)

 伊藤さんとの話の中で、瀬川さんは初めて「デュアルキャリア」という働き方を知った。体力的な厳しさや減量のストレスがかかる格闘技の世界で、第一線で活動するのは20代までが限界だと感じる瀬川さん。当初、「23歳までに格闘家一本で食べていけなかったら引退する」と決めていたが、就職しても競技ができる選択肢を伊藤さんに教えてもらった。

「将来30歳で引退した場合、新卒から働く同級生とは10年近い経験の差がついています。通常の練習時間は毎日90分ほどで、試合時間は3分間×3ラウンドと短いため、残りの時間をうまく使えば会社員として働けるかもと思いました」(瀬川さん)

■会社も「Win-Win」

 昨年から、エコプロコートに週1、2回、7時間出社し、電話対応や見積書の作成などの業務を担当した。約1年間の“お試し期間”を経て、「両立できる」と判断。今年4月からは、正社員として入社する予定だ。瀬川さんの発信力が評価され、入社後は広報としてSNS発信や社内報作成なども担当する。

 一方で、会社のほうも「保護犬格闘家」とも言われる瀬川さんを社員に迎えることで、商品価値が高まる。「Win-Win」の関係が築けるというわけだ。

 格闘家としての寿命は限られる中、保護犬の支援は引退後も続けていきたいと瀬川さん。

「将来、自分も保護犬と里親をマッチングする場所を作りたい。その際はエコプロコートと共同でできたらいいねと、今から社長と話しています」

(ライター・小野ヒデコ)

AERA 2022年2月7日号