オンライン形式で開かれた日米首脳会談に臨む岸田首相/1月21日夜、首相官邸(photo 内閣広報室提供)
オンライン形式で開かれた日米首脳会談に臨む岸田首相/1月21日夜、首相官邸(photo 内閣広報室提供)

 オンラインによる日米首脳会談と日米安全保障協議委員会が1月にあった。共同発表文から浮かび上がる日米の思惑や「敵基地攻撃能力」などについて考える。AERA 2022年2月7日号から。

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 岸田文雄首相は1月21日、バイデン米大統領とのオンライン会談で、「日本の防衛力を抜本的に強化する決意」を表明した。これは、2週間前の7日に行われた日米安全保障協議委員会(2プラス2)が発表した共同発表文と同じ表現だ。発表文には「日本は、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意を表明した」という表現も盛り込まれた。「あらゆる選択肢」とは何を意味しているのだろうか。

 2プラス2翌日の朝刊各紙の視線は、「米『敵基地攻撃能力』歓迎」(読売)、「『敵基地攻撃』検討 米に伝達」(日経)、「敵基地攻撃 日米同盟で『最適化』」(産経)など、敵基地攻撃能力に集中した。岸田首相も日米首脳会談でバイデン大統領に、敵基地攻撃能力の保有を含め、あらゆる選択肢を検討すると伝えたという。

 敵基地攻撃能力とは、敵からの攻撃が差し迫った際に、敵の拠点を先制攻撃する力を意味する。政府は「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは思えない」(1956年、鳩山一郎内閣の統一見解)とし、その保有を合憲とする一方、専守防衛の原則を巡る国内外の反発を考え、能力は持たないという立場を維持してきた。

■中ロ北のミサイル開発

 政府・自民党が敵基地攻撃能力の検討を本格化させた契機の一つが、2020年6月に起きた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備断念だった。約4500億円の費用に加え、改修に10年、2千億円が必要とされたためだ。

 ただ、代替策について、政府はイージス艦2隻を建造する方針は決めたが、イージスシステムだけを搭載する艦にするのか、水上戦や対潜戦などにも対応できるものにするのか、詳細は詰まっていない。米ハーバード大アジアセンターの池田徳宏シニアフェロー(元海将)は「海上自衛隊だけで600人規模の増員が必要だが、その手当てもついていない。イージス・アショアの目的の一つとしていた海上自衛隊の負担軽減という課題は残されたままだ」と語る。

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