映画「さがす」は、長編映画デビュー作「岬の兄妹」で数々の映画賞を受賞した片山慎三監督の新作だ。作品と映画作りにかける思いを、主演の佐藤二朗、清水尋也と語り合った。 AERA 2022年1月31日号の記事を紹介する。

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――片山慎三監督と佐藤二朗は20年前のドラマ「アイノウタ」で現場を共にした間柄で、片山監督は佐藤に直接手紙で主演のオファーをした。

片山:「宮本から君へ」の二朗さんのお芝居が、普段のコメディータッチの役とは全然違ってすごく新鮮で、もっとこういうお芝居を見たいと思った。脚本を書く前から二朗さんに演じてもらいたいと思っていました。

佐藤:手紙に「佐藤さんの作品全部観ているわけではありませんが」って書いてあったのが誠実だと思いました。「アイノウタ」の時に「面白い奴だな」と思ったことは覚えていて、でも当時片山は21歳で、人というよりまだ猿という感じで。

清水:僕、今22歳なんで猿みたいなものです(笑)。

佐藤:(笑)、あなたは全然しっかりしてるから。それで「岬の兄妹」を見て、こんな作品がもっと増えればいいと思っていたところ、「さがす」の台本がすごく面白かった。よくぞ俺に話を持ってきてくれたと思いました。多分、近いうちに俺なんか相手にされなくなるくらいの監督だと思います(笑)。

清水:脚本を読んで、役者として充実した時間が過ごせる映画になると思いました。この役を自分以外の役者が演じていたら、すごく嫉妬しただろうなと。

佐藤:俺もそう思う。

■あの目でお願いします

片山:清水くんは若いけど、器用で理解が早い。面白がって役を演じてくれているのも現場で伝わってきたので、一緒にやっていてすごく楽しかった。いい目をするんですよ。

清水:僕が演じる山内は、普通の青年の顔もあれば、殺人犯モードに入った瞬間の顔もある。それをどう見せるかを意識して芝居しているうちに、監督と目の話をするようになりまして。それで「ここはあの目でお願いします」っていう謎のワードが生まれました(笑)。

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