AERA 2022年1月17日号より
AERA 2022年1月17日号より

 コロナ禍で在宅勤務が普及し、座りっぱなしで運動不足という人も少なくないだろう。いつまでも若々しくありたいなら、生活習慣を見直するが必要がある。重要となるのは、「肺」と「骨」を衰えさせないことだ。「体内年齢」を特集したAERA 2022年1月17日号から。

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 運動不足は、重要な臓器の「年齢」にも大きく影響する。そう指摘するのは、みらいクリニック院長の今井一彰医師だ。

「肺です。もともと20代をピークに肺の組織は壊れていき、肺活量も落ちてきますが、巣ごもり生活でさらに『肺年齢』が上がってしまう可能性があります」

 肺年齢は、肺活量と1秒間に吐き出せる息の量(1秒量)を、医療機関などで「スパイロメトリー」という器具によって計測、日本呼吸器学会が設定する年齢・性別・身長に応じた数値と対応させて算出する。あくまでも指標だが、やはり人によって大きな差が出る。

 30代なのに肺年齢が90代だった人もいたという。どこで差がつくのか。今井医師が指摘するのは、運動不足による「呼吸筋」の衰えだ。

「肺を膨らませる役割は、最も大切な呼吸筋である横隔膜が担います。運動不足で肥満になると横隔膜が上にあがって働きが弱くなり、肺の膨らみが悪くなります。すると、肺が収縮するときに使う内肋間筋や腹斜筋などの呼吸筋も使われなくなり、弱っていくんです」

 姿勢の問題もある。リモート作業でパソコンに前かがみの姿勢で向かう時間が増えてはいないだろうか。これにより、他の呼吸筋にも悪影響が出るという。

「首筋にある胸鎖乳突筋や斜角筋は、肋骨を引き上げ胸郭を広げるために使われますが、これらの動きが悪くなり、肺の膨らみを妨げてしまうんです」

「座る」より「立つ」

 では、肺年齢を若々しく保つにはどうすれば? 今井医師は、コロナ禍でテレワークが増えた社会人には「座り続けることをやめる」ことをすすめる。

「少なくとも30分に1回は、座った姿勢での作業を中断して、立ちましょう。その際、ストレッチなどの運動をすることが有効です。できれば立ったままでの作業がベスト。私もこの取材、立ってお話ししています」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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