AERA 2022年1月17日号より
AERA 2022年1月17日号より

 毛細血管がゴースト化し、その役割が果たされなくなれば、見た目が老け、不調が生じるなど、病気のリスクも高くなる。

■大敵は加齢と高血糖

 最新の研究では、アルツハイマー型認知症との関係も指摘されている。脳には血液脳関門(BBB)があり、ここを介して必要な物質を血液中から選んで脳へ供給し、脳内で作られた不要な物質を血液中に排出する。

「BBBの実体は毛細血管で、ゴースト化すると、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの回収・排出が滞る。脳に過剰に蓄積され、やがてアルツハイマー病を発症するのです」

 ゴースト血管化の原因の一つは加齢だ。加速させる因子には、高血糖がある。体内で過剰な糖質とたんぱく質が結びつく「糖化」が起こり、体内に焦げのような物質「AGE」が発生すると、毛細血管がAGEを取り込み、細胞の老化を促進する活性酸素が大量に発生する。

 一方、「Tie2(タイツー)」という血管内皮細胞に発現する分子が、ゴースト血管防止に有効なことが明らかになっている。

「毛細血管の壁細胞からアンジオポエチン1が分泌されると、タイツーを活性化させ、血管の壁細胞と内皮細胞が接着して毛細血管を安定させます。しかし加齢とともにアンジオポエチン1が分泌されにくくなり、高血糖による酸化ストレスなどが加わると、タイツーが活性化されなくなって、ゴースト血管に至るのです」

■下肢の筋肉を鍛える

 ゴースト血管は、年を取れば誰でもリスクがある。だが、予防や改善は可能だ。マウスの実験では、ゴースト化した血管でも、血管の細胞同士の結びつきを高めると血流が回復。酸素を組織に送達できるようになった。

「血流を良くすることは、ゴースト血管の予防・改善に欠かせない条件です。一番のお勧めは、ウォーキングやスクワットのような下肢の筋肉を鍛える運動です。ふくらはぎの筋肉を刺激するかかと上げの習慣化もいい」

 タイツーを活性化させる物質を食品で取るのも効果的だ。

「食生活に取り入れやすいのは、シナモン、スパイスであるヒハツ、ルイボスティーが、タイツーを活性化させることがわかっています。私自身、毎日摂取していますし、90歳代の両親も実践しています。両親は肌がツヤツヤでピンピンしていますよ」

 もちろん、ゴースト血管予防・改善には、バランスの良い規則正しい食事、減塩、質の良い睡眠、ストレス軽減など、血管の健康を守る生活習慣も肝要だ。こうした習慣が、動脈硬化対策にもなり、血管年齢を若返らせることができる。(ライター・羽根田真智)

AERA 2022年1月17日号