「演技をするのは愛しているからです!」と目を輝かせたジョーンズ。オンライン取材をするだけで、元気をもらえた(photo (c)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS)
「演技をするのは愛しているからです!」と目を輝かせたジョーンズ。オンライン取材をするだけで、元気をもらえた(photo (c)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS)

 映画「コーダ あいのうた」で、ろうの親を持つ子どもを演じた注目の俳優、エミリア・ジョーンズ。難しい役柄から感じとったことは何か。AERA 2022年1月3日-1月10日合併号から。

【写真】映画「コーダ あいのうた」の場面カットはこちら

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 コーダ(CODA)という言葉をご存じだろうか。Children of Deaf Adultsの略で、「ろうの親を持つ子ども」を意味する。

 映画「コーダ あいのうた」は、自然に恵まれた米マサチューセッツ州の小さな海辺の町を舞台に、コーダである少女の成長を描く。米国サンダンス映画祭で観客賞など4冠を達成。世界配給権が映画祭史上最高額となる2500万ドル(約26億円)で落札された注目作だ。

 ルビー・ロッシは高校生ながら、朝から船に乗って一家の生業である漁業を手伝っている。両親と兄は耳が聞こえないため、唯一聞こえる彼女は家族の通訳係だ。そんな彼女がひょんなことから、バークリー音楽大学を目指すことに。だが、ルビーの歌を聞くことができない両親は娘の才能を信じられず、家業にとっても娘が必要なだけに大学受験に猛反対するが……。

■9カ月かけて猛特訓

 ルビーを演じたのは、ロンドン出身のエミリア・ジョーンズ(19)。子役からキャリアをスタートし、「NEXTエマ・ワトソン」と話題になった注目株。ルビー役は17歳で受けたオーディションで決まった。

「信じられませんでした! 父が歌手なので常に歌のあふれる家庭で育ちましたが、きちんと歌のレッスンを受けたことは一度もなく、手話も漁もやったことはありません。受かる可能性は低いと思っていたんです」

 アメリカ式手話(ASL)と歌は映画の核心だけに撮影前に9カ月間かけて猛特訓。現場に入ってさらに2週間特訓した。

「ASLは正確であることを心がけていました。台詞として覚えるのでなく、共演者とアドリブで演技をしたかったですし、言語としてできるようになりたかったんです。コーダの方々の体験を知ることも大切でした。私が知らない彼らのコミュニティーを、私が代表して表現しなければならなかったからです」

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