人手不足が深刻な地方こそ、都市部の「副業人材」を求める傾向が強い
人手不足が深刻な地方こそ、都市部の「副業人材」を求める傾向が強い

 コロナ禍で進んだリモートワークが、地方の人手不足を救う一手になっている。副業をマッチングするサービスも花盛り。あなたの能力を求める会社があるはずだ。「自分の市場価値を上げる副業」を特集したAERA 2021年12月27日号から。

【グラフ】兼業や副業への意欲は高い?

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 緊急事態宣言の延長が続き、日本中が鬱積(うっせき)した思いを募らせた今夏。東京都内のIT企業に勤める島崎梨紗さん(29)は、次のようなキーワードでネット検索を繰り返していた。

「ふるさと副業 愛知」

「ふるさと副業 東北」

 この「ふるさと副業」とは、リクルートが提供しているサービスだ。自分の地元や縁のある地域に貢献したいものの、現実的にUターン・Iターン就職は難しいという人と、人材不足に悩む地方企業をマッチングする。両者の条件が合って契約に至れば、リモートで副業を進めていく。

■リモートで距離が縮む

「当社ではキャリアアップのための社外活動を支援する『サンカク』という事業を展開しており、『ふるさと副業』はその中のサービスの一つです。コロナ禍でリモートワークが普及し、時間の融通が利く人が増え、ウェブ会議で離れていてもコミュニケーションを交わしやすくなったことがサービス拡大の背景にあります」

 こう説明するのは、リクルートで「サンカク」のプロダクト・事業開発を担当している古賀敏幹さん。冒頭の話に戻ると、島崎さんは本業で若い女性向けコンテンツの企画・制作やインスタグラムなどのSNS運用を担当。やりがいを感じていたものの、業務が完全リモートに移行したことが転機となった。

「家にいることが多くなり、空き時間の有効活用を考えた際、せっかくなら自分のためになる副業をやろうという結論に達しました。愛知県出身で山形の大学に進学したので、いつかは地元や東北に恩返しをしたいとも思っていました」(島崎さん)

島崎梨紗(しまざき・りさ)/IT企業に勤めて7年目。本業で培ったSNS運用のスキルを生かし、縁のある東北の企業で副業に励む(写真:本人提供)
島崎梨紗(しまざき・りさ)/IT企業に勤めて7年目。本業で培ったSNS運用のスキルを生かし、縁のある東北の企業で副業に励む(写真:本人提供)

 検索の結果、島崎さんは「サンカク」のサイトにたどり着き、ふるさと副業の募集告知を見つけたという。ウェブでの面談やワークショップを経て業務委託契約を結び、9月から副業をスタートさせた。

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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