米国と中国の対立が厳しさを増し、台湾での衝突を懸念する声も上がる。米国と中国の敵対関係の背景にあるものとは。AERA 2021年12月27日号で、専門家の宮家邦彦さんと中林美恵子さんが意見を交わした。
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米バイデン政権は12月6日、中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区の人権問題などを理由に、来年2月の北京冬季五輪に政府当局者を送らない「外交ボイコット」を表明した。9、10の両日には約110の国と地域を招いて「民主主義サミット」を開催し、招待されなかった中国は「分断と対立を作り出す」と強く批判した。今後の米中対立の行方、日本への影響はどうなるのか。
『米中戦争「台湾危機」驚愕のシナリオ』(朝日新書)の著者でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦さんと、米国政治に詳しい早稲田大学教授の中林美恵子さんは、まず直近の両国の動きについて語り合った(12月14日にオンラインで実施)。
■情報戦のジャブの段階
──外交ボイコットや民主主義サミットなど、米中対立を際立たせる動きが続いています。
宮家:民主主義サミットについてはバイデン氏の大統領選の公約でした。トランプ氏を追い落とすための対抗軸として掲げたので、やらざるを得なかったということです。
国外的には米中の覇権争いの側面の一つである「情報戦」の意味合いがあります。これからも長く続く情報戦の「ジャブ」です。まだ危機的な状況の「パンチ」ではない。相手の出方を見ているところです。そうした情報戦のなかで、北京冬季五輪のボイコット問題も出てきたというふうに見ています。
中林:民主主義サミットは早くから開催が決まっていました。問題は、米議会で党派を超えて支持がある外交ボイコットをいつ表明するかだったと思います。民主主義サミットの直前に合わせたことは、メッセージ強化やほかの国との連携のイメージを醸し出すために、タイミングを考えた可能性があります。
宮家:米国はメッセージを送り、中国はダメージを最小限にしようと対抗しているわけです。中国は民主主義サミットに合わせて「中国こそが民主主義」だと発信しましたが、今回は必ずしも成功しなかった。サミットでは約110の国と地域が集められ、台湾まで呼ばれ、大義名分を米国が取りましたから。