AERA 2021年12月27日号より
AERA 2021年12月27日号より

 多くの大学が対面授業を再開する中、オンラインで授業を受け続ける学生も少なくない。大学側は学生のオンラインを望む声を受け止め、新たな授業スタイルを模索する。AERA 2021年12月27日号から。

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 各大学はオンラインと対面の良さを生かした新たな授業スタイルの構築に取り組む。近畿大学では11月8日以降、対面を軸とした方針を打ち出す一方、オンライン視聴やハイブリッドなどの授業形態も継続している。副学長の渥美寿雄・理工学部教授はこう語る。

「人間的なコミュニケーションの機会を持ってもらうためにも、対面授業中心にあるべきだと思っています。一方、1年半の間に実感したオンラインの良さも残し、よりよい授業のあり方を探りたいと考えています」

■オンラインで高い効果

 オンライン継続を求める学生のなかには、「楽だから」にとどまらない切実な理由がある人もいる。先日、渥美教授にこんな声が寄せられたという。

 録画映像を何度も見返して何とか授業についていっている。対面授業は不安だ──。

 実際、オンライン授業の学習効果の高さを挙げる大学教員は多いという。近畿大学でも、ほぼ全授業が対面だった2019年度とオンラインが大半だった20年度の学生の成績(評価の基となる素点の平均)を比べると、調査した全学部で20年度のほうが点数が高かった。副学長の江口充・農学部教授が説明する。

「大教室に100人いると、後ろの人と教壇の間にはかなり距離がありますが、オンラインなら全員が等距離。それに、大教室で多数の学生から次々手が挙がることはあまりありませんが、チャットは反応が返ってきます。教育効果は高いし、学生も授業に集中するようになりました」

 早稲田大学でも対面7割を目標に、オンラインと組み合わせて授業を実施する。学生らへのアンケートの結果、それが最もニーズに近い割合だという。

「オンライン授業は理解度に合わせて繰り返し視聴でき、知識習得型の授業や対面授業の予習復習などに活用しています。授業の質が向上すると考えており、今後も全科目を対面とする予定はありません」(広報課)

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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