「彭帥問題」で中国と真っ向から対立 なぜ女子テニス協会はIOCと違う対応できた？

　中国の女子テニス選手・彭帥さんが、中国の張高麗前副首相から性被害を訴えた問題で、国際オリンピック委員会は中国批判を避けている。一方、女子テニス協会は、中国に真相解明を求め、ツアー大会の中国からの撤退も辞さない構えだ。中国に毅然とした対応がとれた理由はどこにあるのか。AERA 2021年12月20日号から。

【写真】彭帥さんに不倫関係を告発された張高麗氏

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　なぜ、このタイミングで衝撃の告発をしたのか。

　言論統制が厳しい中国で真相を突き止めるのは容易ではない。背後に誰かがいるのではないか、との陰謀論すらささやかれる。謎が、謎を呼ぶ。

　中国の女子テニス選手、彭帥（ポン・ショワイ）さん（35）の投稿とされる文章がSNSの微博（ウェイボー）に公開されたのは11月2日だった。前副首相で、中国トップ7人にあたる中国共産党の政治局常務委員も務めた張高麗（チャン・カオリー）氏（75）から性的関係を強要され、その後も不倫関係を強いられたという赤裸々な内容だった。投稿はすぐに削除され、彼女の消息は途絶えた。中国の主要なポータルサイトから、「彭帥」と「張高麗」のキーワードで検索しても、ヒットしなくなった。

「失踪」騒動が幕を開けた。

　女子ダブルスの世界ランキング1位になったこともある彭帥さんとは、どのような選手なのだろうか。

■4大大会で2度優勝

　女子の世界ツアーを統括する女子テニス協会（WTA）の公式サイトを見ると、4大大会のダブルスでは全仏オープンとウィンブルドン選手権で優勝している。2008年北京、12年ロンドン、16年リオデジャネイロと五輪3大会にも出場した。12月9日時点の世界ランキングは、シングルスは193位、ダブルスは311位。コロナ禍前の昨年2月のカタールでの大会予選に出たのを最後にツアーの出場歴はない。

　4大大会のシングルスとなると昨年1月の全豪オープン1回戦で、日比野菜緒選手（27）にフルセットの熱戦の末に敗れたのが最後になる。