「日本一のストラテジスト」の圷 正嗣〈あくつ・まさし〉さん(撮影/写真部・高橋奈緒)
「日本一のストラテジスト」の圷 正嗣〈あくつ・まさし〉さん(撮影/写真部・高橋奈緒)

 SMBC日興証券チーフ株式ストラテジストの圷正嗣(あくつ・まさし)さんは今年3月、2つの日米金融専門紙誌主催の機関投資家投票によるランキングで、ストラテジスト部門1位に輝いた「日本一のストラテジスト」だ。東京市場きっての先読みのプロに、近未来の社会や株式市場の姿を尋ねると、意外な答えが返ってきた。

■相場分析を真正面から愚直にやってきた

 証券会社のストラテジストは個別企業の業績から世界経済まで幅広く目配りして、最良と思われる投資戦略――つまり「どう運用すればいいか」のアドバイスを発信するのが仕事。

 圷さんがSMBC日興証券の前身の日興コーディアル証券に入社したのは2005年のことだ。最初の仕事は「個人向けの株式投資戦略の立案」だった。

 当時、株価は上向きかけていたが、その後は2006年にライブドア・ショック、2008年にリーマン・ショックが直撃し、2011年には東日本大震災に見舞われ、欧州危機もやってきた。昨年はコロナ禍が相場を揺さぶった。

 圷さんの信条は「マーケットに真正面から向き合うこと」。インパクトだけを狙った刺激的なレポートも見かけるが、それとは一線を画す。

「投資家に役立つよう、マーケットを正しく予想することを愚直に続けてきました」。その結果がストラテジスト1位の栄誉として結実した。

■2022年3月までの日経平均予想は

 今後の日経平均株価はどう動くのか。圷さんは、来年3月までの下値は2万7000円程度、一方、上値は3万2000円と予想している。

「2020年は新型コロナの流行をいち早く抑え込んだ中国の株価が大幅に上昇しました。今年の前半は米国株の上昇の勢いが強く、夏に入って欧州の株価が上がりはじめています。景気回復のセオリー通りに投資マネーが向かっているのです。

 10~12月期の日本は経済活動の正常化が予想されますので、株価上昇は自然な流れだと考えます。正常化といってもコロナ前の状態に完全に戻るわけではありませんが……」

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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