米国発のFIREブームが日本にも波及し、この「夢」を達成する人が続々登場。早期退職してお金のことも心配せずのんびりできるイメージだが、実際は? AERA 2021年12月6日号から。
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FI(ファイナンシャル・インディペンデンス=経済的自立)とRE(リタイア・アーリー=早期退職)を目指すFIRE。これを達成した人たちの暮らしはどう変わったのだろうか。
大手企業に勤めていた穂高唯希(ほたかゆいき)さん(32)は約7千万円の資産を築き、2019年に会社を辞めた。穂高さんは「若くして経済的自由を獲得し、人生の選択肢を増やす」ための展望を学生の頃から考えていた。会社も仕事も好きだが、ほかの生き方もしたいと入社後も感じた。熟考の末、「お金を貯めること・資産を形成すること」に一定期間、集中しようと決めた。
穂高さんが具体的に実践したのは、給与の8割を投資に回しつつ“支出を最適化”すること。ペットボトル飲料は買わずに水筒を持参、デートは公園で手作り弁当とともにピクニックなど、支出にメリハリをつけた。
運用では米国株をメインに購入し、その配当金を積み上げた。「預貯金は資産全体の1割に満たなかった」ので、ほぼ証券口座に入金した格好だ。
農業にスポーツ三昧
その結果、19年には月額ベースで20万円を超える配当、分配金を得られるようになった。給与の8割を入金したとはいえ、30歳でこのレベルに達したのは高収入による面もある。ただ、高収入でもこれと同じことができる人は何人いるだろう。
「最近は現金比率を増やしたので、今の配当金は、月平均15万~20万円です」
FIRE達成で、嬉しい誤算といえる収入も得られた。著書が8万5千部のヒット。その印税収入も入ってきた。
退職とともに穂高さんは郊外に移住。農業・林業・除雪などをやり始めた。
「自然が好きで、食べものを自分で作ることにも興味がありました。農家の方々に教わりながら四季折々の野菜を育て、田植えや収穫、精米などを経験させていただいています」