原油高騰の後追いでLNGも値上がりし、日本の電気・ガス料金にはね返る。大国のエゴむき出し政治の火花が家計を直撃する格好(getty images)
原油高騰の後追いでLNGも値上がりし、日本の電気・ガス料金にはね返る。大国のエゴむき出し政治の火花が家計を直撃する格好(getty images)

 今年の冬も暖房費が家計を圧迫しそうだ。原因の一つはLNGの高騰だが、なぜここまで上がるのか? AERA 2021年12月6日号はLNGのプロに聞いた。

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 12月は全国の電力大手10社と都市ガス大手4社が一斉に値上げを実施する。これで4カ月連続。迷惑な右肩上がりだ。

 標準的な家庭の場合、1カ月の電気代(東京電力)が7485円、ガス代(東京ガス)が5015円。2021年1月と比べて電気が1168円、ガスが717円、上がった。なぜ光熱費は上がっているのか。

「原因の一つは、LNG(液化天然ガス)の価格変動です」

 と語るのは、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の白川裕さん。LNGの買い付けや技術開発、国際会議出席などを幅広くこなしてきたLNGのプロだ。

「日本の電気は4割がLNGから作られ、3割が石炭。残りを原子力や水力、太陽光などでまかなっています。LNGの値上がりは発電コスト上昇につながり、電気代を押し上げます」

■パナマでタンカー渋滞

 日本のLNGの輸入元は今年1~9月までで1位がオーストラリア、2位がマレーシア、3位がカタール。輸入は長期契約が8割、残り2割は単発的に取引を行うスポット契約だ。

「日本のガス会社のLNGタンクは貯蔵量が大きく、価格が高い時には買わずに様子を見る場合も。しかし電力会社のLNGタンクは貯蔵量が比較的少なく、発電量がかさむと、すぐになくなってしまいます。このためガス会社が電力会社にLNGを融通することもあります」

 今年1月に電気代が大幅に上昇する局面があった。

「あのときは日本や中国、韓国が急に寒くなったことや、世界の多くの生産設備がたまたまトラブルを起こしていたことも影響しました」

 さまざまな要因でLNGが足りなくなってきていたわけだ。

「日本などの需要国は余力のある米国からの輸出に頼ろうとしたのですが、パナマ運河でタンカーの渋滞が起こり、LNGの品薄に拍車がかかりました」

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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