AERA 2021年11月29日号より
AERA 2021年11月29日号より

 こうしたことの理由について、後藤さんは(1)グローバル化の進展(2)日本型雇用の崩壊──の2点が大きいと指摘する。

「日本の大企業は1980年代後半から本格的にグローバル化を進め、90年代後半にはそれとぶつかる場面が多い年功型賃金や長期雇用といった日本型雇用が見直され、賃金は長期に低下し始めました。グローバル競争に勝つためにコスト削減が強まり、勤続年数とともに給与が上がる正社員が減っていきます」

経営側に抵抗しにくい

 後藤さんは労働組合の問題も指摘する。

「日本は企業別組合。社内の従業員だけでつくられているので、経営側にどうしても抵抗しにくい形態となっています。対して世界は産業別にまとまった産業別組合です。交渉は経営者団体と産業別の労働組合のリーダーで行うため、産業全体のことを考え賃金も上がりやすくなっています。日本にも産業別組合はありますが、企業別組合の連合体をそう呼んでいるだけで、実質は企業別組合と同じです」

 実際、日本の賃金水準は他の先進国と比べると低い。経済協力開発機構(OECD)によれば、20年の日本の平均賃金は3万8514ドル(約437万円)と、加盟35カ国中22位。差が大きかった韓国にも15年に抜かれた。

 賃金も上がっていない。OECDによると、20年までの30年間で日本の賃金上昇率はわずか6%。対照的に米国は50%、英国は48%、フランスは33%、ドイツは35%、韓国は88%も伸びている。(編集部・野村昌二)

AERA 2021年11月29日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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