イラスト:土井ラブ平
イラスト:土井ラブ平

 今秋の自民党総裁選で岸田文雄首相を紹介する際によく聞かれた、「東大3回落ち」。実は一般的にもよく聞かれる。AERA 2021年11月29日号は、「〇〇落ち」をどう思っているのか、当事者や聞かれさた人に聞いた。

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「東大に3回落ちて早稲田へ」

 今年9月の自民党総裁選で、岸田文雄・現首相が総裁に決まり、その人となりを紹介する際に何度も使われたこのフレーズ。元々は本人が昨年のメディアの取材で、「私は線の細いエリートではない。東大受験に3回失敗した」というナゾな論理で自己申告していたものだ。

「だから何?」ではある。しかしこの「○○大学に落ちた結果、××に行った」を「わざわざ自分から」アピールする人、岸田総理だけではないようだ。

 SNSで、あるいはキャンパスでの会話で、たとえば「私は京大落ちの早稲田」「東京理科大です。いちおう東工大落ち」など、「私が通う(あるいは出身の)××大学よりも偏差値の高い○○大学を落ちて、いまの大学にいる」とする、「○○落ちの××」という言葉が、実はよく目につく。なぜなのか。

「いまでもつい、学歴の話をしてしまうんです」

 会社員の男性(31)は、受験から10年余がたったいまも、悔しさが消えない。1浪して一橋大学を目指したが、結果的に入学したのは同志社大学。充実した学生生活で、いい出会いもあった。学歴だけが大事ではない。そう頭ではわかっている。

秋でも引きずる?

「でも、『○○落ち』と言う人の気持ち、よくわかります。国立大学を目指して叶わず私立に来た人は、私立専願で入学してきた人とは『一緒にされたくない』思いもあるでしょう。私も『一橋落ちの同志社』と口に出してしまったことはあります」

 では「○○落ち」を聞かされた方はどう感じるか。慶応大学理工学部1年生の男性(19)は11月、サークルでの初対面の挨拶で同級生に「東大落ちで、いま理工学部ですー」と言われ、驚いたという。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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