トレーニングの成果
高橋の体は今大会、明らかに大きくなっていた。
本人も、それは感じている。
「全体的に一回りは大きくなったのかなと、自分の姿を見た時に思います」
太くなった腕、広くなった肩幅、背中。積み上げてきた地道なトレーニングの成果に違いなかった。
たった一つしかない北京五輪への切符を争う全日本選手権3連覇中の小松原美里、小松原尊組を合計で7・30点上回っての6位だ。昨季は2戦2敗だったライバルを、勝負の五輪シーズン初戦で上回り、立場を逆転させた。
2年前、アイスダンス挑戦を表明した会見で高橋は、五輪出場については控えめに語っていた。
「本当に初めてのことで、可能性の部分では『もしかしたら少しのパーセンテージでもあるかな』って。相当大変だと思うけど」
代表争いは12月の全日本選手権まで続く。小松原組がこのまま引き下がるはずもない。
だが、この急成長だ。高橋にとって五輪はもう、決して現実味のない夢ではない。(朝日新聞スポーツ部・吉永岳央)
※AERA 2021年11月29日号