宇野昌磨はショートプログラムで102.58点、フリーで187.57点とともに1位だった
宇野昌磨はショートプログラムで102.58点、フリーで187.57点とともに1位だった

 ISUグランプリシリーズNHK杯が11月12日から14日に東京で開催され、男子シングルは宇野昌磨選手が3季ぶりに同シリーズ優勝を果たした。AERA 2021年11月29日号では、世界トップへの決意を新たにした宇野選手がNHK杯での躍進を振り返る。

【写真】ショートプログラムで演技中の宇野昌磨

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 開幕前日から宇野昌磨(23)の表情に自信がみなぎっていた。

「自分が成長できている実感がある」

 調子の良さが伝わってきたのはその日の公式練習だ。4回転ジャンプはループ、サルコー、フリップ、トーループをすべて着氷した。3週間前のグランプリ(GP)シリーズ第1戦スケートアメリカに比べても、精度は上がっていた。だからこそ、だろう。宇野は今大会、自身に課すハードルが高かった。

 ショートプログラム(SP)は102・58点で首位発進。しかし、演技後は反省ばかりが口を突いた。4回転─3回転の連続トーループを、4回転─2回転にしたことを「もっと挑戦するべきだった」と悔やんだ。

 翌日のフリーはチャレンジする姿勢をリンクの上で表現した。

「まとめにいくのではなく、失敗してもいい、そんな気持ちで挑みにいった」

 4回転5本を組み込んだ「ボレロ」で、まずは今季再投入した冒頭のループを成功。GOE(出来栄え点)3・30点を引き出した。続いて、最も力を入れてきたというサルコーも決めた。

「すべてが練習通り。偶然ではなく、必然だという実感を持ちながら、滑れた」

 後半、フリップが2回転になった。

「緩みが少し出てしまった」

 それでも、4本の4回転を着氷した。

GPファイナルに進出

 スタンディングオベーションを浴びる。合計での自己ベストを更新する290・15点。3季ぶりのGPシリーズ優勝で、GPファイナル進出を決めた。

 苦しんできた。一昨季はGPで表彰台に乗ることさえできなかった。昨季の世界選手権も4位にとどまった。そんな中、世界選手権を2度制しているステファン・ランビエル・コーチから「世界一になるためには何が必要だと思う」と問われ、「ジャンプ」と答えたという。

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