ISUグランプリシリーズNHK杯が11月12日から14日に東京で開催され、男子シングルは宇野昌磨選手が3季ぶりに同シリーズ優勝を果たした。AERA 2021年11月29日号では、世界トップへの決意を新たにした宇野選手がNHK杯での躍進を振り返る。
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開幕前日から宇野昌磨(23)の表情に自信がみなぎっていた。
「自分が成長できている実感がある」
調子の良さが伝わってきたのはその日の公式練習だ。4回転ジャンプはループ、サルコー、フリップ、トーループをすべて着氷した。3週間前のグランプリ(GP)シリーズ第1戦スケートアメリカに比べても、精度は上がっていた。だからこそ、だろう。宇野は今大会、自身に課すハードルが高かった。
ショートプログラム(SP)は102・58点で首位発進。しかし、演技後は反省ばかりが口を突いた。4回転─3回転の連続トーループを、4回転─2回転にしたことを「もっと挑戦するべきだった」と悔やんだ。
翌日のフリーはチャレンジする姿勢をリンクの上で表現した。
「まとめにいくのではなく、失敗してもいい、そんな気持ちで挑みにいった」
4回転5本を組み込んだ「ボレロ」で、まずは今季再投入した冒頭のループを成功。GOE(出来栄え点)3・30点を引き出した。続いて、最も力を入れてきたというサルコーも決めた。
「すべてが練習通り。偶然ではなく、必然だという実感を持ちながら、滑れた」
後半、フリップが2回転になった。
「緩みが少し出てしまった」
それでも、4本の4回転を着氷した。
GPファイナルに進出
スタンディングオベーションを浴びる。合計での自己ベストを更新する290・15点。3季ぶりのGPシリーズ優勝で、GPファイナル進出を決めた。
苦しんできた。一昨季はGPで表彰台に乗ることさえできなかった。昨季の世界選手権も4位にとどまった。そんな中、世界選手権を2度制しているステファン・ランビエル・コーチから「世界一になるためには何が必要だと思う」と問われ、「ジャンプ」と答えたという。