清和政策研究会(安倍派)の会長に就任し、細田博之氏(左)とグータッチをする安倍晋三元首相/11月11日、東京・永田町の自民党本部
清和政策研究会(安倍派)の会長に就任し、細田博之氏(左)とグータッチをする安倍晋三元首相/11月11日、東京・永田町の自民党本部

 自民党最大派閥の領袖に安倍晋三元首相が就き、30年ぶりに「安倍派」が復活した。その狙いや思惑はどこにあるのだろうか。AERA 2021年11月29日号の記事を紹介する。

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「予想以上に票を伸ばした維新には驚いたが、総選挙での快勝は自民党が勝ったというよりも、立憲民主党が負けすぎた。今回は与野党1対1の構図の選挙区で自民の候補者が競り勝ったが、これは候補者が悪ければ同じ論理で負ける」

 自民党のベテラン議員はそう言って、公示前の276議席から数こそ減らしたが、それでも261議席(追加公認を含む)を死守し、自民・公明の両党で過半数を維持した解散総選挙を振り返った。

記憶に残っている間に

 選挙の「顔」だった岸田文雄首相は胸をなで下ろした格好だが、自民党内には岸田政権は長期政権にはならないという見方が多い。最大の理由は「危機管理」への懸念だ。

「岸田さんは、それこそ平時であれば人の話も聞くし、ある意味安定している。けれどもコロナに限らず非常時の大胆な決断ができるかというと、そこは岸田さん率いる宏池会では不安がある。乱世には、例えば命がけで憲法改正を成し遂げ、日本を守るという覚悟を持ったリーダーの誕生が望まれる」(前出の自民党ベテラン議員)

 岸田首相率いる宏池会でなければ誰なのか──。

 そんな中、自民党最大派閥の会長に安倍晋三元首相が就任した。これまでは「細田派」であったが、名実ともに「安倍派(93人)」の誕生だ。安倍氏が所属する政治グループは、父・晋太郎氏も率いた「清和政策研究会」。旧称「清和会」だ。このタイミングでの「安倍派」誕生には、アベノミクスに代表される首相時代の実績が国民の記憶に残っているうちに、自分の派閥から次期総裁を誕生させ、党内での政治的プレゼンスを高めたいという思惑があるようだ。安倍元首相本人の「焦り」も滲(にじ)む。

「総裁選では派閥外の高市早苗政務調査会長を政治観が近いという理由で推したが、細田派(当時)では一致できなかった。名実ともに派閥の長となった今、高市氏を派閥復帰させるのではないか、という噂がある。しかし、萩生田光一経済産業相や西村康稔前経済再生相など、直筋の候補者もいるので簡単にはいかないだろう」(自民党関係者)

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