本誌の記事も紙では縦書き、ウェブ版では横書きが基本。紙では大小の写真を組み合わせ、見出しの大きさやフォントにもこだわっている(photo 編集部・米谷陽一)
本誌の記事も紙では縦書き、ウェブ版では横書きが基本。紙では大小の写真を組み合わせ、見出しの大きさやフォントにもこだわっている(photo 編集部・米谷陽一)

 縦でも横でも読める日本語。ネットは横書きが主流ですが、紙の世界では、縦書きも健在です。そこには、たくさんのこだわりが詰まっていました。AERA2021年11月22日号の記事を紹介する。

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 パソコンやスマートフォンの画面で見る文字は横書きばかり。いつの間にか、縦書きで読み書きする機会はめっきり減り、「横書き文化」にどっぷりつかるようになった。横書きの蔓延(まんえん)で私たちは何を得て、何を失いつつあるのだろうか。

 縦書きと横書きでは編集の流儀も異なる。本誌も記事をウェブ版の「AERA dot.」に転載する際は横書きだ。どんな点に気をくばっているのか。担当編集者に聞くと、ざっとこんなポイントを挙げた。

 縦書きの全角数字を、横書きで半角に変換するのは必須だ。例えば、縦組みの「99・9%」は横組みで「99.9%」と小数点の表記も変える。改行は縦書きだと1字下げるが、横書きは1行空けるのがメジャーという。この方が画面で見た目にきれいに収まるからだ。

 他誌の編集のプロにも聞いてみよう。

 海外旅行のバイブル「地球の歩き方」(学研プラス)シリーズは、すべて横書きだ。その理由は明白です、と宮田崇編集長(44)は言う。

「欧文などの現地語やカタカナ表記が多いため、横書きのほうがストレスなく読めます」

 地球の歩き方はページ数が多いのも特徴だが、息苦しさは感じない。欄外データや写真、イラストが豊富に盛り込まれ、好きなときに気になる情報だけチェックする「つまみ食い」の感覚で読める。これも横書きの効果なのかもしれない。

■レイアウトで印象激変

 だが、レイアウトでイメージは一変する。1979年発行のアメリカ編とヨーロッパ編の初版本を見せてくれた。写真やデータは少なめで、横書きの文字が幅いっぱいに詰まっている。読むのに相当の覚悟が必要だ。

 カラフルでポップな現在の体裁に進化する過程で参考にしたのは、学習参考書のレイアウトだという。最近はURLの掲載も増え「海外旅行のガイドブックに横書き以外の選択肢はないはずです」と宮田さんは言う。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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