5歳半の長女が好む本(左)と2歳半の長男が好む本(右)。こんなに文字量が違う(写真/著者提供)
5歳半の長女が好む本(左)と2歳半の長男が好む本(右)。こんなに文字量が違う(写真/著者提供)

 わがやには3人の子どもがいます。5歳半、2歳半、そして生後3カ月の赤ん坊です。5歳半の長女は、アメリカで現地のプリスクールに通っていたこともあって英語も日本語も上手に話します。すでにわたしの英語の発音を直してくるくらいで、わが子ながら羨ましい限り。対して2歳半の長男は、ほとんど英語を話しません。日本語のほうは「おしゃべり上手だね」と保育園の先生にほめてもらえるくらいなのですが、英語はさっぱりです。

 特にアメリカ人の夫は、英語を教えるのは自分の責任とばかりに長男が日本語を使っていても根気よく英語で話し続けていました。その成果か、さっぱりだった英語が最近ではちょっぴりくらいに上達してきました。「Do you speak English?」「Yes, I speak English.」といったシンプルな文章だったらオウム返しできるようになってきたのです。この調子でアメリカの家族と話ができるようになったらな~なんて夢想していたら、最近、彼の口から衝撃のひと言が飛び出しました。夫が「Can you say “What color do you like?”(「どんな色が好き?」って言ってみ)」と尋ねたときです。今まで通りだったら、たどたどしいながらも「What color do you like?」とオウム返しするはずが、長男はこう言ったのでした。「Youってなーに?」

「Youってなーに?」ってなに?!!

 と、夫もわたしも思わず叫んでしまいました。アナタかれこれ2年半、たぶん1日百回以上聞いてるはずよその単語。なのに今更youって何? ですか、今までyouって何かわからず「Do you speak English?」って言ってたのですか。夫は「Oh my sweet son…」と頭を抱えて嘆き、わたしはお腹を抱えて笑いました。

 ただ、少し経ってから冷静に考えてみると、これは大きな進歩です。「Youってなーに?」と尋ねられるということは、今まで無意味な音のつながりにしか聞こえなかったフレーズの中から、youという一単語を拾うことができるようになった証拠。「この前聞いたフレーズにも今日聞いたフレーズにも、なんだかyouって聞こえる言葉があるぞ、youってなーに?」と考えて尋ねたのかもしれません。そう思うと、「Youってなーに?」と長男が言った瞬間すかさず拍手喝采してやればよかった……と大いに反省したのでした。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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