イラスト 土井ラブ平
イラスト 土井ラブ平

 解散から50年、なお続く怪物的な人気。今年は「レット・イット・ビー」に「ゲット・バック」。豪華CDに書籍、そして6時間ドキュメンタリー。離れられない理由は何か? AERA 2021年11月15日号の記事を紹介する。

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 横浜市内の老舗ライブハウスでザ・ビートルズの歌が鳴り響いたのは10月8日夜だった。コロナ禍での緊急事態宣言が解除されたばかり。登場したのは本物そっくりに演奏するトリビュートバンド「COMMA-DADA(コマダダ)」だ。

「今日は『レット・イット・ビー』の特集です」とMC役の永沼忠明さん(61)。1982年に東京・六本木にあったビートルズ専門ライブハウスで演奏を始め、「ポール・マッカートニー一筋」で歌ってきた。ポールの東京公演の楽屋で本人と会ったこともあるとか。

 中学でビートルズを知った筆者にも、なじみの曲が続く。60年の人生、これまで何度聴いただろう。思わず歌い出す。歌詞は相当デタラメだけれど。

 締めの11曲目は「ゲット・バック」。心臓が震えるようなあのノリに熱量はさらに高まる。「やっぱり、皆さんの人生の中にビートルズが入ってるんですよ」。永沼さんが取材のときにそう言ったのを思い出した。

 解散から半世紀、ジョン・レノンとジョージ・ハリソンはすでに亡く、健在はポールとリンゴ・スターだけ。それでも「世紀のバンド」は永遠の存在であり続けている。

■解散後の「後追い世代」

 10月は驚きの季節だった。解散した70年に出た最後のアルバム「レット・イット・ビー」の特別記念版が、リハーサルやアウトテイクなどを含む「スーパー・デラックス」などで発売。さらに、収録曲がレコーディングされた69年1月のセッション中に録音されたメンバーらの詳細な会話や未公開写真満載の豪華本も出た。

 11月下旬には、このセッション時に密着撮影した映像を編集した6時間のドキュメンタリー作品が動画配信サービスで公開される。人間関係のもつれなどで解散への道をたどりつつも極上の音楽を作り続けた彼らの姿を、修復された美しい画質で堪能できるのだ。

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