飯塚幸三受刑者は9月2日、実刑判決を受けた後、タクシーで東京地裁を出る。同17日に禁錮5年の実刑判決が確定。10月12日、東京地検に出頭し、午後に東京拘置所に収容された(c)朝日新聞社
飯塚幸三受刑者は9月2日、実刑判決を受けた後、タクシーで東京地裁を出る。同17日に禁錮5年の実刑判決が確定。10月12日、東京地検に出頭し、午後に東京拘置所に収容された(c)朝日新聞社

 近年、問題視されているネット上の誹謗中傷。東京・池袋の乗用車暴走事故では、受刑者がネット上で激しく批判されたことが社会的制裁として考慮され、量刑軽減の理由の一つにもなった。この事故で妻子を亡くした松永拓也さん(35)は「過度な制裁によって減刑になったことは悲しく思っています」と話す。一方で、こうした現状を改善する対策も始まっている。AERA 2021年11月8日号で取材した。

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 ネット上では誹謗中傷が相次いでいる。この夏に開催された東京五輪・パラリンピックでも、選手に対する悪意に満ちた書き込みが問題視された。

 ヤフーなどIT企業20社でつくる一般社団法人「セーファーインターネット協会(SIA)」が昨年6月に設立した「誹謗中傷ホットライン」によれば、開設から1年間に寄せられた誹謗中傷の相談件数は2630件に上った。これまでは被害者自身がプロバイダーなどに削除を要請しなければならなかったが、SIAは無償で代行する。

 2630件のうち、ガイドラインに該当する1813のURLを削除などするように要請する通知をプロバイダーなどに送付し、1436のURLの投稿が削除された。「なりすましアカウントをつくられ、侮辱的な内容を書きこまれた」「水商売をしていた経歴を暴かれたり、容姿を侮辱される投稿をされた」といった投稿だ。SIA事務局の吉井まちこさんは、こう語る。

「実生活やネット上での個人間トラブルのもつれが原因で、誹謗中傷に発展するケースが多くあります。実際に8割近くが削除されていますので、一人で悩まずに相談してほしい」

 人の攻撃衝動は匿名になると触発されやすい。しかも、ネットは日ごろ理性で抑えているもう一つの人格が出てきやすいとされる。

 松永さんも参加する交通事件の被害者遺族らでつくる一般社団法人「関東交通犯罪遺族の会(あいの会)」代表理事の小沢樹里さん(40)は言う。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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