クイズ大会の成績にはメンタルも大きく関係する。「毎回手を見ながら、『自分に解けない問題はない』と自己暗示をかけるのが決まりです」[撮影/蜷川実花、strategist of photography 鈴木心、hair & make up 赤間直幸(Koa Hole)(すべて表紙も)]
クイズ大会の成績にはメンタルも大きく関係する。「毎回手を見ながら、『自分に解けない問題はない』と自己暗示をかけるのが決まりです」[撮影/蜷川実花、strategist of photography 鈴木心、hair & make up 赤間直幸(Koa Hole)(すべて表紙も)]

 近年のクイズブーム、東大生ブームのフロントランナーとして走り抜けてきた伊沢拓司さん。今、願うのは、自分を育ててくれたクイズ文化の伝承だ。AERA 2021年11月1日号から。

【蜷川実花が撮った! 伊沢拓司さんが登場したAERAの表紙はこちら】

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――早押しから難問まで、鮮やかに正解を導き出す姿に爽快感を覚えた人も多いはずだ。

 伊沢がクイズにのめり込んだのは、開成中学校1年のとき。年の離れた先輩への憧れがきっかけだった。

伊沢:最初に本格的にクイズに触れたのは、中学1年のときでした。勧誘されてクイズ研究部に入ったんです。僕が入学した開成学園は中高一貫校だったので、高2の先輩とかといっしょに活動していたんですけど、小学校を出たての自分にとっては、高校生はすごく大人に見えました。とてもフレンドリーに接してくれて、それがかっこよかったんです。「あそこのボウリング場が安いよ」とか「カラオケにいくならこの店がいい」とか、勉強以外のことをたくさん教えてくれました。

■楽しく過ごすツール

――長年にわたり東大合格者数日本一を誇る開成学園だが、意外なことに当時のクイズ研究部は、少人数の弱小チームだった。

伊沢:だからなのか、クイズ初心者の僕でも先輩に勝てることが多かった(笑)。勝つと「伊沢すごいじゃん!」とほめてくれるんですよ。「もっと勝てるようになりたい!」と、どんどんクイズにのめり込んでいきました。

 当初、クイズはあくまで「先輩と楽しく過ごすためのツール」だった。そのときに得た体験は、現在の「クイズはコミュニケーションでもある」という考え方にも影響している。

伊沢:僕は“商業的に良いクイズ”には、三つの視点が大切だと考えています。

 一つ目は「解く相手」の視点。二つ目は「クライアント」の視点。三つ目は「自分」の視点です。

 つまり、まず解答者のこと(年齢や知識量、興味関心)を考える。次に、その場を用意したクライアントが自分に何を期待しているのかを想像してみる。最後に、クイズを出すことで、自分が損をしないように注意する、ということです。

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