当選7回のうち6回を小選挙区で勝ち抜いた松本氏だが、今回は苦戦を強いられている。というのも、緊急事態宣言発出中の今年1月、銀座のクラブで飲食したことが週刊誌で報じられて自民を離党。選挙前の復党はかなわず、無所属での出馬となったからだ。自民は候補者を擁立せず、党所属の県会議員・市会議員が松本氏支援に回るなど事実上の自民候補だが、敗れれば比例復活できない背水の陣だ。10月19日、横浜市内であった出陣式には支持者ら約150人のほか、河野洋平元衆院議長も駆け付けた。出陣式後、報道陣の取材に応じた松本氏は不祥事の説明責任を果たしているかと問われると、「説明とおわびを続けている」と繰り返した。

 序盤情勢では篠原氏優位が報じられる。松本陣営は自民の大物議員の手厚い支援を受けるなど巻き返しに必死だ。21日には安倍晋三元首相が応援演説に立ち、松本氏を「純ちゃん」と呼ぶなど親密さをアピールした。23日以降も麻生太郎副総裁、河野太郎元外相、鈴木俊一財務相らの選挙区入りが予定されている。

 対する篠原陣営。前回選挙では次点だった篠原氏と3位の野党候補の票を合計すると松本氏を9千票余り上回る。今回は維新の浅川氏も立ったが、事実上の野党統一候補として臨む。8月の横浜市長選、今月17日の横浜市議補選で篠原氏が支援した候補が当選するなど、陣営には勢いもある。19日の第一声後、篠原氏に決意を問うと力強くこう答えた。

「皆様のご期待に応えるためにも、今回こそは何としても小選挙区で勝ち抜きます」

(編集部・井上有紀子、川口穣)

AERA 2021年11月1日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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