東浩紀/批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役
東浩紀/批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役

 批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。

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 筆者の会社は「シラス」という動画配信プラットフォームを運営している。19日で1周年を迎えた。

 シラスは全番組有料を掲げる変わったサービスである。いまはネットでは無料が主流だ。そのため配信者も視聴者もページビュー連動の広告収入に従属させられている。それゆえ逆に有料を原則とした。現在登録者は2万5千人強で24のチャンネルが開設されている。登録者数10万、チャンネル数100が目標だ。

 ITプラットフォームは何百万、何千万という数が基本である。それに比べればあまりに小さな商いだが、シラスは人文系や時事評論、芸術系などのマイナーなコンテンツの流通をミッションとしている。新書が5千部売れればいい時代に、2万5千人はけっして無視できる数字ではない。論壇の劣化が謳(うた)われて久しいが、改善の足場になればと考えている。

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東浩紀

東浩紀

東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数

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